従業員が企業に対して抱く感情は、業務の生産性や離職率、さらには顧客への印象や売り上げにも直結します。前回は、従業員が自社に満足しているかどうかを測る従業員満足度調査(ES調査)がなぜ重要視されているのか、企業運営に与える影響は何かといった内容をご紹介しました。
今回の記事では、ES調査をしてみたいけれど、具体的にどのような方法で実施すればいいのかについて、注意すべきポイントとともに実施手順をご紹介します。
Contents
ES調査とは
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)とは、従業員が組織で働く中での働きやすさや満足感の度合いのことを指し、従業員が企業に対して好意的な感情を持っているのか、どんなモチベーションで働いているかなどの満足度を、定量的に数値化し計測するための調査として、注目を集めています。
経営ビジョンや仕事内容、労働環境、福利厚生、報酬、社内の人間関係など、さまざまな要因から構成されている従業員満足度を向上させることで、従業員の仕事へのモチベーションや顧客満足度の向上、離職率の低下など、企業運営にも影響を与えます。
従業員満足度の計測方法
ES調査の基本的なやり方と、設計方法についてご紹介していきます。
調査の目的によってはやり方に違いが生じますが、大きな流れは基本的に変わりません。自社の目的に合わせて調整することをお勧めします。
従業員満足度の調査手法
主に2つの調査方法があります。
- アンケート方式(定量調査)
一般的なES調査は、定量的に計測するためにアンケートを使っておこなわれます。全社員に対して実施することが可能で、紙やウェブを使用します。
- インタビュー方式(定性調査)
従業員一人ひとりに対して職場環境や個人の考えなどを深堀する場合に用いられる方法です。インタビューには時間がかかることもあり、対象者を絞って実施されるケースが多いです。
従業員満足度の実施の流れ
大きな流れとして、下記の手順で調査を実施します。
①目的・目標の決定
②実施方法の策定
③調査項目の作成
④従業員へ配布・回答・回収
⑤集計・分析・課題の抽出
⑥対策の検討・準備・実行
⑦フィードバック
①目的・目標の決定
ES調査を実施することで、「何を知りたいのか・何のためにおこなうのか」をはっきりと明文化することが大切です。目的や目標を決めずに実施すると、調査項目が当たり障りのないものになり、得られる結果も漠然とした傾向が把握できるだけのものになってしまう可能性があります。
「離職率が高い理由を探る」や「よりよい福利厚生を検討するために現状を把握する」など、企業が持つそれぞれの課題を解決できるよう、ES調査の目的や目標を決めましょう。
②実施方法の策定
どのような方法でES調査を実施するのかを検討します。 その際、必ず回答した個人が特定できない方法でおこなうことが求められます。
前述のアンケート方式・インタビュー方式について検討する他にも、自社のリソースを使っての実施、またはアンケートツールの利用や、調査の代行サービスやコンサルティングに依頼をするのかなど、自社の予算やスケジュール等に合わせて検討するとよいでしょう。
また、アンケート形式の場合、自由記述式は回答に対する心理的負担が大きいため、あらかじめ選択肢が用意された選択式を使う調査が一般的です。
③調査項目の作成
調査目的に合わせて、どのような質問項目にするかを検討します。後に分析することを考え、必要な情報を漏れなく得られるように設計することが重要です。
また、アンケートの場合では回答時間が10分を超えない程度の設問数に設定することで、調査に対する負担が軽減し、回答率の低下を防ぎます。もし設問数が多くなるのであれば、複数回に分けて調査を実施することを踏まえ、設計する必要があるでしょう。
④従業員へ配布・回答・回収
従業員に調査項目を配布し、期限までに回答してもらうよう告知します。インタビューの場合は対象者と日程を調整し、時間を作ってもらいます。
回答率を高めるために、「なぜ、どんな目的でこの調査をおこなうのか」といった調査背景の説明をすることや、部署ごとに回答したかどうかをチェックしてもらうことなど、工夫することも必要でしょう。
⑤集計・分析・課題の抽出
回収した情報を集計し、分析をおこないます。集計した結果によって、自社にどのような課題があるのかが明らかになる可能性もありますが、その際、結果について偏った考察をおこなわないように注意する必要があります。事実に基づいた客観的な分析をおこなえるようにしましょう。
⑥対策の検討・準備・実行
調査により明らかになった課題に対して、どのような対策に取り組むのかを検討します。
- 福利厚生の整備
- 人事評価制度の見直し
- 社内コミュニケーションを促進する環境づくり
- ワーク・ライフ・バランスの実現
上記のような改善すべき箇所に対して、具体的な施策を検討し、準備をおこない、実行することで、当初に掲げていた目標を達成することにつながります。「ES調査をおこなって終わり」にならないよう、しっかりと施策に落とし込むことが大切です。
⑦フィードバック
ES調査の実施により、どのような結果が得られ、自社の課題が見つかり、改善のためにどのような施策をおこなうのかを、従業員に対してフィードバックすることも重要です。従業員にとって、自分が参加した調査が「会社に対してどのような影響を与えたのか」を知る機会となり、よりよい企業づくりに対する当事者意識が生まれるかもしれません。
まとめ
「ES調査をおこなう」と一口に言っても、計画から実施に至るまでには多くの考えるべきことが存在します。明確な目的を掲げ、達成することを意識して設計し、実施、そして改善することで、従業員の士気を高めることや、離職率の低下、顧客満足度の向上など、さまざまなプラスの影響につながっていきます。
よりよい組織づくりを目指すすべての方に、この記事でご紹介した情報が役に立てば幸いです。