サステナブルな社会を目指す世界的な大きな潮流の中で、企業はSDGsに取り組むこと、事業を推進することを通じて、社会問題を解決していくことが求められています。一方で注目されているのが、SDGsウォッシュという言葉。SDGsへの取り組みが「見せかけ」「やっているふり」になっていないか。SDGsウォッシュ予防のチェックポイントを解説します。
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サステナビリティに敏感な消費者
持続可能な製品やサービス、そして行動は、未来につながる。それらは、ビジネスと地球の両方に優しく、「(製品やサービスが)持続可能であるかどうか」に興味を持つ消費者は年々増加している。世界の消費者の93%がもっと多くのブランドに社会・環境問題にとって価値のある支援を行うよう求めており、10代の若者の4分の3がより持続可能な商品を購入したい、と答えている。
参考:FuterraBSR_SellingSustainability2015.pdf
これはイギリスにあるFuterra社が2015年にマーケター向けに発表した資料の冒頭にある一文です。サステナブルな社会を目指す世界的な大きな潮流の中で、企業はSDGsに取り組むこと、事業を推進することを通じて、社会問題を解決していくことが求められているのです。
SDGsウォッシュとは?
SDGsの浸透とともに注目されているのが、SDGsウォッシュです。SDGsに取り組んでいるとPRしながら、見せかけだけで実態が伴っていない行為のことを指します。表面的な、やっているふりをする企業を揶揄した言葉です。
SDGsウォッシュは、環境に良いと見せかける広告で消費者を欺く「グリーンウォッシュ」から生まれた言葉です。
グリーンウォッシュの事例
「グリーンウォッシュ」の事例としては、
・本来体に有害なタバコを「オーガニックのタバコ」「生産の時に風力発電の電力を使用している」などの訴求で環境に優しいイメージで訴求したタバコ会社
・アパレル業界における「コットン」問題。環境に優しいイメージがある「コットン」だが、材料の綿花は、世界の耕作地面積の約2.5%にすぎないにも関わらず、1キロのコットンの栽培には、2万リットル(Tシャツ1枚に換算して2700リットル)もの大量の水資源を必要とし、世界の殺虫剤の16%が放出されている(WWFの独自データによる)
などが知られています。
参考:SustainableJapan
コットンって環境に悪い?サステナブルファッション視点でのコットンの生産と利用
SDGウォッシュの具体的
では、SDGウォッシュの具体的としてどんなものがあるのでしょうか。
・SDGsに取り組むとホームページで公表していながら、行動実態がない
・SDGsに取り組むといいながら、サプライチェーンで長時間労働が行われている
・環境にやさしいと商品をPRしながら、実際には大量の温室効果ガスを排出している
・既存の取り組みを無理やりSDGsに関連づけている
・エコ、省エネなどの言葉やイメージを根拠なく使用して商品やサービスをPRしている
など、SDGsに取り組んでいるといいながら、実際のビジネスやマネジメントにおいて環境や社会に悪影響を及ぼしていることをなどを指します。これらの事態は、取り組んでいるつもりが、かえって経営リスクを招きます。
SDGsウォッシュのリスク
SDGsウォッシュが起こり、指摘されることで被るリスクには、どんなものがあるのでしょうか。最も大きなリスクは「信頼を失う」という点に尽きます。
・社会的な批判にさらされる
・ソーシャルメディアでの情報拡散
・不買運動が起こり、売上が低下
・取引先との契約破棄
・従業員のモラルの低下
・従業員の内部告発
・ステークホルダーの信頼失墜のより、株価の下落・資金調達が難しくなる
SDGsに取り組んで環境課題を解決しようという公言していたが、実態が伴っていないことが明らかになると、企業イメージの低下は避けられません。その影響は、消費者、取引先、従業員、金融機関にまで広がります。SDGsに取り組むことで、経営が適切に行われていない、という烙印を押されるような事態は避けなければなりません。
SDGsウォッシュを予防する10のチェックポイント
SDGsウォッシュに陥らないためには、どういった予防策が有効なのでしょうか。『週刊東洋経済』2021年7月3日号で紹介されていた予防の10原則をご紹介します。
SDGsウォッシュ予防の10原則
1. ビジネスにおけるSDGsの重要性を全社的に学習する
ビジネスにおけるSDGsの重要性や基礎的な知識を全社的に学び「SDGsリテラシー」を高める。
2. 自社のパーパス(存在意義)を明確にして全社的に共有する
「自社が社会に提供する本質的な価値は何か?」を全社的に共有する。
3. 丸投げせずにトップがSDGsの取り組み課題をデザインする
パーパスは、現在提供している商品の外観だけにとらわれず、自社の中核的価値観に根ざして本当に取り組むべき社会課題、つまりSDGsの取り組みテーマを見極める基準となる。SDGsの実践とは、ビジネスで社会問題に立ち向かうことにより、自社のパーパスを具現化することを意味する。それはビジネスの方向性をデザインすることである。そのデザインは安易に部下やコンサルタントに丸投げせず、トップが主導することが重要になる。
4. SDGsの取り組み課題を経営計画などの中で位置づける
SDGs実践の形骸化は、SDGsウォッシュの始まり。取り組みの実効性を確保するためには、SDGsの取り組みを経営計画などにしっかり位置づけ、取り組みが重要が「業務」であることを根付かせる必要がある。
5. 取り組みを評価するためのKPIを事前に決める
SDGsの実践では、漠然とした「社会によいこと」ではなく「具体的な成果」を上げることが求められる。SDGsの取り組みテーマに対して成果を上げられたかどうか否かの判定には、重要業績評価指標、いわゆるKPIが必要である。そのためこれから取り組もうとする社会課題と経営状況に照らして、合理的で打倒なKPIを設定する。
6. 取り組み状況を記録して開示可能な状態にする
「現実にSDGsの実現に有効な行為が存在する」ことが、SDGs実践の大前提である。実践をステークホルダーに信じてもらうためには、取り組み状況の記録と誠実に開示できるようにすることが不可欠。
7. 現在進行形のものと過去の情報を区分して管理する
過去にSDGsへの取り組みを行っていたとしても、現在進行形でなければ、取り組んでいないことを意味する。過去の取り組み事例をPRして印象操作をしては、ステークホルダーの不信を招く。過去の取り組みと現在とを明確に区分して管理する。
8. 取り組みを人事考課とリンクさせる
SDGsの実践は、従業員レベルで見れば「業務」のひとつ。いかにSDGsの重要性を学び、経営計画などで位置づけられ、取り組みが求められたとしても、実践が評価させなければ形骸化につながる。
9. 取り組みの継続性を確認する
SDGsへの取り組みは打ち上げ花火ではない。根深い社会課題に対してスポット的な取り組みにとどまらず、業績に左右されないサステナブルな実践の仕組みづくりが求められる。
10. 社内のESG問題を予防する体制を構築する
社会問題は社内にだけあるものではない。自社のビジネスを通じて社外の社会問題を解決しようとする企業が、実は内部で労働問題や環境問題などを抱えていれば、従業員からSDGsウォッシュとの批判が上がる。襟を正して、社内の社会問題を実効的に予防する体制を構築することが求められる。
〈おすすめ書籍〉
『やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門』(泉 貴嗣/技術評論社)
まとめ
知らず知らずのうちに陥ってしまうのが、SDGsウォッシュ。どんなにすばらしい目標を立てたところで、実行する体制が伴っていなければ、形骸化してしまう。目標に対する指標がなければ、それが良かったのか、悪かったのかを検証できず、あいまいな取り組みに終わってしまう。それは、SDGsに限りません。SDGsウォッシュと批判されないためには、会社全体を見渡せるトップが陣頭指揮をとり、取り組みの形骸化を予防する仕組みを活用していくことです。自社のSDGsへの取り組みをチェックしてみてください。
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