働き方改革の推進やワークライフバランスが重要視される中で、従来の働き方に捉われない柔軟で多様な働き方が求められています。その施策の一つとして注目されるのが「週休3日制」です。
今回の記事では、週休3日制を実施するにあたってのメリット・デメリットに加え、世界各国で広がる週休3日制導入に向けての動向についてご紹介します。
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「週休3日制」とはどんな制度?
「週休3日制」とは、その名の通り一週間あたりの休日を3日とし、働く日を4日とする制度です。
勤務時間を「1日あたり8時間、週に5日」としていた働き方を、「1日10時間、週に4日勤務」とする企業もあれば、1日あたり8時間勤務は変えないまま、単純に働く日数を1日減らして週4日勤務とする企業もあります。
注目される背景
多くの企業が「完全週休2日制」や「週休2日制」を設ける中、育児や介護などと仕事の両立を目指すワークライフバランスの実現や、副業など多様な働き方に対応するための施策として、週休3日制を希望する従業員に対して適用する「選択的週休3日制」の導入を進める企業も増えてきています。
最近では新型コロナウイルスの流行による業績の悪化や、感染拡大を防止する観点から、従業員の出社を抑えたい企業の意向も一因となっています。
また、2021年6月には経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」に「選択的週休3日制」の普及が盛り込まれ、さらに注目が集まっています。
週休3日制のメリット・デメリットとは
週休3日制を導入することによってどんな影響があるのか、そのメリット・デメリットを見てみましょう。
企業にとってのメリット
- 従業員の生産性や満足度の向上
- 残業代やオフィス光熱費などのコスト削減
- 人材確保・離職率の低下
- 感染症対策
従業員にとってのメリット
- 自由に使える時間が増え、私生活が充実する
- 育児や介護などの理由があっても仕事を続けられる
- 出社による移動や食事などの費用、負担の削減
子育てや介護で仕事を辞めなければならなかった従業員でも、働き続けることができる選択肢が増えることで、離職率の低下や従業員の満足度向上にもつながります。
また、働く時間が減ることによってプライベートの時間が増え、家族や友人と一緒に過ごしたり、資格取得のための勉強や大学院に通ったりなど、仕事以外のことに打ち込めるようになることで人生の幸福度が増し、仕事にもいい影響を与えるようになります。
多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
企業のデメリット
- 勤怠管理や給与体系が複雑化する
- 業務の停滞やビジネス機会の損失につながる可能性がある
- 制度の見直しや新たな構築の時間が必要になる
- 正社員と非正規社員の格差が拡大する
従業員のデメリット
- 給料や年金など、金銭面に影響が出る可能性がある
- 労働密度が上がり、業務に負荷がかかる
- 従業員同士のコミュニケーションの量が減る
企業によっては、労働日数が1日減ることに合わせて給料も減ってしまうケースがあります。企業にとっては人材コストの削減になりますが、従業員にとっては大きなデメリットです。また、週休3日の従業員と週休2日の従業員の間での給与体系の差異や、業務量の調整など、制度の見直しや構築にも時間がかかります。
取引先や顧客と休日が合わず、ビジネス機会の損失につながる可能性があることにも懸念が必要です。また、今まで5日でおこなっていた業務を4日で終わらすことができず、返って残業時間が増えてしまうようでは本末転倒です。企業には長時間労働を防ぐ対策も求められるでしょう。
週休3日制に対して賛成か、反対か
2021年5月に日本ファイナンシャルアカデミー株式会社が、全国の20代〜50代の会社員400名を対象におこなった「選択的週休3日制と家計、副業、投資に関する意識調査」では、「選択的週休3日制」の導入に対して約8割が賛成という肯定的な結果が出ました。
一方、「今後あなたの職場に導入されると思いますか?」という問いに対しては、「有給休暇すら取れていない」「常に人員不足」といった理由から、同じく約8割が「自分の職場での導入は難しい」と感じており、制度への肯定的な気持ちはあるものの、自分の身には起こらないと捉えていることを表しています。
また、制度への賛成理由としては、仕事以外の時間が増えることで趣味や副業などに時間を使うことや、育児との両立がしやすくなるという意見が多くある一方、反対理由としては収入や年金、社会保障など、金銭面に関する意見が多くを占めています。
賛成理由 | 反対理由 | |
1位 | 趣味など好きなことに時間を使える (199人) | 収入が減るのが嫌 (57人) |
2位 | 育児と両立がしやすくなる (120人) | 年金や社会保障に影響が出るのが嫌 (29人) |
3位 | 副業がしやすくなる (94人) | 出勤する日の労働時間が増えるのが嫌 (28人) |
週休3日制に対する世界の動き
世界各国でも「週休3日制」の導入に向けて、様々な研究や実験が進められています。
イギリスの研究
イギリスのヘンリービジネススクールの研究「Four Better or Four Worse(2019年)」では、250社以上の企業を対象に週休3日のトレンドについて調査したところ、週休3日を取り入れた企業の64%が従業員の生産性向上が見られたとのこと。さらに、78%の従業員が今までよりも幸せを感じ、また70%がストレスが減少したと回答しており、週休3日は従業員の生活の質を向上させることにもつながっています。
アイスランドの実験
2021年7月に発表されたアイスランドでの週休3日制の実験では、週休3日による生産性の低下は見られず、幸福度が向上したという結果が発表されました。この実験は、アイスランドの生産年齢人口の約1%に相当する労働者が参加し、1回目は2014年~2019年、2回目は2017年~2021年にかけて実施されました。
実験前には、労働時間の短縮は非生産的で、かえって労働時間を長くしてしまうのではないかという懸念があったものの、実際には生産性やサービスの質の低下は見られず、時間内に効率よく働けるよう業務のあらゆる場面で改善が見られたとのこと。
また、多くの参加者において、賃金が減ることなく労働時間の短縮に成功したことで、ストレスの低下や幸福を感じるようになり、余暇を楽しむ時間が増えたことで、仕事の成果にもいい影響を与えたケースもあったという結果が出ました。
進む世界各国の「週休3日制」
こうした週休3日制における世界各地での成功事例が増えてきたこともあり、2020年5月にはニュージーランドのアーダン首相が、新型コロナウイルス対策と観光市場の拡大を目指して「週休3日制」の導入を企業に呼び掛け、2021年5月にはスペイン政府が週休3日制の3年間の試験運用計画を承認し、実施する企業に対して支援金5000万ユーロ(約66億円)を拠出することを発表しています。
まとめ
週休3日制には、見過ごせないデメリットがあるものの、それ以上に得られるメリットも多くあります。世界各国での成功事例をもとに、日本、ひいては自社ではどのように週休3日制を実現できるかを検討してみてはいかがでしょうか。