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【2023年度版】健康経営銘柄の紹介と成功企業の実践事例

現代ビジネスの新たな潮流として、「健康経営」の重要性が高まってきています。企業にとって、従業員の健康は単なる福利厚生を超え、経営成果に直接的な影響を及ぼす重要な資産となりつつあります。この記事では、健康経営がどのように経営戦略の核となり、企業の生産性やブランド価値に寄与しているのかを深掘りします。2023年度の市場動向と企業戦略において、健康経営銘柄としての取り組みがいかに企業の競争力を高め、持続可能な成長に寄与するかを詳細に解説します。

Contents

経営戦略としての健康経営の重要性

現代のビジネス環境における健康経営の役割と価値

現代の経営環境において、健康経営は単なる福利厚生の一環を超え、経営戦略の根幹を成す要素へと進化しています。従業員の身体的、精神的、そして社会的な健康は、企業の生産性、イノベーションの力、さらにはブランド価値に直接的な影響を与えます。健康経営は、従業員の能力を最大限に引き出し、組織の持続可能性と成長を促進するための重要なレバーとなっています。

従業員の健康と幸福に投資することは、経営成果に対しても正の影響をもたらします。これは、従業員の病欠減少、生産性の向上、そして長期的な人材保持に繋がります。また、社内の健康意識が高まることで、従業員間の協力とコミュニケーションが促進され、組織全体の士気が高まる効果も期待できます。

2023年度の市場動向と企業戦略への影響

2023年度の市場動向を見ると、健康経営はより多くの企業にとって重要な経営課題となっています。特に最近は、従業員の健康と安全に対する意識が高まり、これが企業のブランド評価にも影響を及ぼしています。投資家や消費者は、単に財務的な成績だけでなく、企業が従業員の福祉にどのように取り組んでいるかを重視するようになっています。

このような市場の変化は、企業の戦略においても健康経営を中心に据える動きを加速させています。企業は、従業員の健康をサポートすることによって、リスク管理、社員のエンゲージメント向上、ブランドの評価強化といった複数の目標を同時に達成することができます。また、健康経営への取り組みは、新しい人材を惹きつけ、既存の人材を維持する上でも重要な要素となっています。

結論として、2023年度において、健康経営は経営戦略の不可欠な部分であり、企業の競争力を高め、持続可能な成長を達成するための鍵となっています。企業は、健康経営を経営の中核に位置づけることで、変化する市場環境に対応していく必要があります。

健康経営銘柄の基礎知識

健康経営銘柄の概念と経営における利点

健康経営銘柄とは、従業員の健康を支える経営を行っている企業を東京証券取引所の上場会社の中から認定・評価し、投資家や消費者に対して情報を提供する制度です。これにより、企業の社会的な評価が高まり、企業価値を向上させることが期待されます。

具体的には、以下のような利点があります。

  1. 社会的信認度の向上:企業の健康経営への取り組みを公表することで、企業の社会的信認度を向上させることができます。
  2. 従業員のモチベーション向上:健康経営を通じて、従業員の働きやすい環境をつくり出し、従業員のモチベーションを向上させることができます。
  3. 投資家からの評価:健康経営を行うことで、企業価値を高めるとともに、投資家からの評価を受けやすくなります。

以上のように、健康経営銘柄化は上場企業にとって多面的な利点をもたらします。

健康経営銘柄と健康経営優良法人との関連性と違い

健康経営優良法人は、特に優れた健康経営に取り組む法人を社会的に評価し、その取り組みを可視化するための制度です。この中で、大規模法人の中の上位500社が「ホワイト500」として認定されます。これに対して、中小規模法人の中で優れた取り組みを行う企業は「ブライト500」として認定されます。

健康経営銘柄は、東京証券取引所の上場会社の中から健康経営に優れた企業を選定し、投資家に紹介するための制度です。これらの企業は健康経営の普及拡大に向けてアンバサダー的な役割を果たします。

修正された表:

制度対象目的説明
健康経営優良法人(ホワイト500)大規模法人健康経営の取り組みを可視化し、社会的評価を促進健康経営に特に優れた大規模法人の上位500社を認定
健康経営優良法人(ブライト500)中小規模法人地域中小企業の健康経営取り組みを認定し、普及を目指す健康経営に優れた中小規模法人を認定
健康経営銘柄上場企業健康経営に優れた企業を選定し、投資家に紹介、普及促進長期的な視点からの企業価値向上を重視する投資家に対して紹介

健康経営銘柄の選出プロセス

「健康経営銘柄2023」は、企業の健康経営の取り組みを評価し、優れた企業を選定しています。この選定は以下のプロセスで行われています。

  1. 健康経営度調査の実施:「令和4年度健康経営度調査」を実施。尚、令和4年度に実施された健康経営度調査における回答企業数は3169社で、前年度から300社の増加がありました。
  2. 評価基準に基づく選出:東京証券取引所上場企業(TOKYO PRO Market上場会社を除く)で、健康経営優良法人(大規模法人部門)に申請している法人のうち上位500位以内であり、必須項目をすべて満たしている企業が選定候補として選出されます。
  3. 財務指標スクリーニング:、ROE(自己資本利益率)に基づくスクリーニングや加点が行われ、前年度の調査への回答の有無や社外への情報開示状況も評価されます。最終的に、業種内で最高順位企業の平均より優れている企業が「健康経営銘柄2023」として選定されます。原則として33業種毎に1社を選定し、一定の基準を満たしている場合は1業種から複数社を選定しますが、1業種あたりの選定数は5社を上限とします。

健康経営銘柄の評価基準について

「健康経営銘柄」の評価モデルは、企業の健康経営への取り組みを総合的に評価するためのフレームワークです。このモデルは5つの主要な要素から構成されており、各企業の健康経営の実践度合いを評価します。以下は、それぞれの要素の詳細です:

  1. 経営理念・方針:この部分では、企業が健康経営を経営理念や方針にどの程度組み込んでいるかを評価します。企業が従業員の健康を重視し、その重要性を経営層が理解し、実行しているかが重要です。
  2. 組織体制:ここでは、健康経営に取り組むための組織体制がどれだけ構築されているかを見ます。例えば、専任の担当者や部署が設置されているか、健康経営に関連する意思決定プロセスが整っているかがポイントです。
  3. 制度・施策実行:実際に実施されている健康経営の制度や施策を評価します。従業員の健康促進プログラム、職場環境の改善、健康相談窓口の設置など、具体的な施策がポイントになります。
  4. 評価・改善:企業が健康経営の取り組みをどのように評価し、必要に応じて改善しているかを見ます。定期的な評価、フィードバックの取り入れ、改善策の実施などが評価されます。
  5. 法令遵守・リスクマネジメント:健康経営に関連する法令の遵守やリスクマネジメントがどの程度行われているかを評価します。労働安全衛生法などの遵守、職場の健康リスクの特定と管理などが含まれます。

各フレームワークには、社会的な現状を踏まえた評価配点のウェイトが設定され、これに基づいて最終的な健康経営度が算出されます。この評価モデルは、企業が健康経営をどの程度真剣に取り組んでいるかを明らかにし、健康経営銘柄の選定において重要な役割を果たしています。

健康経営銘柄の企業戦略

3d. Hand doctor is turning a dice and changes the word “Health” to “Wealth”

2023年度健康経営銘柄

業種銘柄コード企業名選定回数
水産・農林業1332株式会社ニッスイ5回目
鉱業1605株式会社INPEX4回目
建設業1887日本国土開発株式会社3回目
食料品2269明治ホールディングス株式会社初選定
2502アサヒグループホールディングス株式会社6回目
2587サントリー食品インターナショナル株式会社初選定
2871株式会社ニチレイ3回目
繊維製品8111株式会社ゴールドウイン2回目
パルプ・紙3891ニッポン高度紙工業株式会社3回目
化学4043株式会社トクヤマ初選定
4461第一工業製薬株式会社4回目
4901富士フイルムホールディングス株式会社3回目
4912ライオン株式会社初選定
医薬品4151協和キリン株式会社2回目
石油・石炭製品5019出光興産株式会社2回目
ゴム製品5186ニッタ株式会社初選定
ガラス・土石製品5332TOTO株式会社8回目
鉄鋼5406株式会社神戸製鋼所4回目
非鉄金属5801古河電気工業株式会社2回目
5802住友電気工業株式会社2回目
金属製品3436株式会社SUMCO2回目
機械6381アネスト岩田株式会社2回目
電気機器6645オムロン株式会社5回目
6724セイコーエプソン株式会社2回目
6965浜松ホトニクス株式会社初選定
7751キヤノン株式会社5回目
輸送用機器7203トヨタ自動車株式会社2回目
精密機器7701株式会社島津製作所3回目
その他製品7951ヤマハ株式会社2回目
電気・ガス業9532大阪瓦斯株式会社初選定
海運業9104株式会社商船三井3回目
空運業9201日本航空株式会社5回目
9202ANAホールディングス株式会社2回目
情報・通信業4432ウイングアーク1st株式会社初選定
9434ソフトバンク株式会社初選定
9687株式会社KSK5回目
9719SCSK株式会社9回目
卸売業8002丸紅株式会社2回目
8015豊田通商株式会社3回目
8031三井物産株式会社初選定
小売業8252株式会社丸井グループ6回目
銀行業8316株式会社三井住友フィナンシャルグループ初選定
証券、商品先物取引業8604野村ホールディングス株式会社初選定
保険業8766東京海上ホールディングス株式会社8回目
その他金融業8566リコーリース株式会社7回目
不動産業8801三井不動産株式会社初選定
サービス業2168株式会社パソナグループ初選定
6078株式会社バリューHR3回目
8769株式会社アドバンテッジリスクマネジメント2回目

参考URL:経済産業省の「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!より

成功した企業の戦略と運営事例3選

サントリー食品インターナショナル株式会社

サントリーグループは、人々の豊かな暮らしと健康への貢献を目指し、2016年に「健康経営宣言」を掲げ、多様な取り組みを実施してきました。この取り組みは、従業員とその家族全員の「人間の生命の輝き」を目標に据えています。健康で活力に満ちた日常生活を送り、やりがいを持って働くことが、サントリーの健康経営の核となっています。

同社では以下の項目を目標に掲げています。

項目内容2022年実績2030年目標
生産性向上体調不良が理由で勤務できない日数3ヶ月の平均0.8日0.2日
生産性向上病気やケガがない時を100%とした場合の仕事の生産性4週間の平均79%90%
ハイリスク者低減特定保健指導基準対象者率21.4%10%

具体的な取り組み例(一部)としては下記のとおりです。

項目内容
運動習慣定着に向けた 「Activeプラス10宣言」従業員が自ら 「日常生活におけるプラス10分の身体活動の取組み」の目標を宣言する「Activeプラス10」を全従業員対象に実施し、運動習慣の動機付けをサポート。
若年層の朝食欠食対策手軽に摂れる朝食としてフリーズドライのスープを配布、併せて規則正しい食生活のメリットを情報提供。
食事支援特定保健指導予備群などの食生活に課題のある人に対して、栄養士が設計し栄養バランスのとれた食事が手軽に摂れる宅配型のお弁当を自宅に配達。日常生活の中で実食し、自身の食生活の改善に役立てるプログラムを実施。
ラインケアメンバーの 「心の健康」についての心がけや具体的な対処法を学ぶ機会として、マネジャーを対象にラインケアセミナーを実施

参考URL:https://www.suntory.co.jp/company/csr/soc_healthmanage/

ライオン株式会社

ライオン株式会社の健康経営で【従業員一人ひとりの働き甲斐や志、モチベーションを高め、生産性を向上する】という経営課題を解決することを考えています。

この課題を解決するための目標を下記のように設定しています。

目標指針内容実績2030年目標
働きがいの向上ワークエンゲイジメント2.7(2020年)3.0
アブセンティズムの低減休業率0.8%(2021年)0.7%未満
プレゼンティズムパフォーマンス発揮度74.5%74.5%

具体的な取り組みについては下記の通りです。

項目具体的な取り組み
健康管理システム “GENKIナビ”「見れば分かる(健康状態、対策、将来リスク)」、「自己管理ができる(セルフチェック)」、「楽しく健康づくりに取り組める」をコンセプトに、健康診断結果の見える化、日常生活データのセルフチェック、生活習慣改善に向けた動機づけコンテンツなどを提供。
予防歯科習慣の浸透歯科健診時の保健指導、ハイリスク者への個別指導、デンタルフロスや歯間清掃用具の利用促進キャンペーン、教育動画の提供が含まれます。また、プロケア受診補助キャンペーンやお勧め歯科医の紹介などの実施
3大がん対策補助金制度の導入がんの早期発見・早期治療を目的として「3大がん対策補助金制度」を2021年に導入。この制度は、肺、胃、大腸がんなどの早期発見を促進するために、高精度のがん検診費用を補助しています。
禁煙への取り組み強化職場における受動喫煙防止策として、喫煙者へ禁煙⽀援と環境整備を推進

参考URL:https://www.lion.co.jp/ja/sustainability/employee/health/

出光興産株式会社

出光興産は「人が中心の経営」を掲げており、従業員一人ひとりの健康が必要不可欠と考えています。

「制度・施策の実行状況」や「組織体制」などが高く評価され、「健康経営銘柄2023」に2年連続で選定されています。

健康経営における取り組みには、従業員の心と身体の健康を支える多岐にわたる施策が含まれています。特に注目すべきは、2021年8月に北海道製油所の食堂メニューが「スマートミール」の認証を取得したことです。この認証は、カロリーを抑えつつ栄養バランスが取れた食事を提供する取り組みが評価されるもので、石油元売製油所としては初の取得となります。

出光興産では、従業員のメンタルヘルスケアにも重点を置いており、年間ストレスチェックの実施、高ストレス者への面談、職場ごとの分析とフィードバック、さらに新入社員への継続的ケアを行っています。また、体の健康にも注力し、健康診断の受診率を99.9%に達成しており、生活習慣病の予防対策や再検査の促進に努めています。

さらに、グローバルな健康問題への対応として、海外拠点での従業員への健康管理サポートも行っています。これには赴任前教育、ストレスチェック、健康診断、予防接種の推奨などが含まれており、新型コロナウイルス感染症の拡大防止にも積極的に取り組んでいます。

これらの取り組みを通じて、出光興産は従業員の健康を重視し、健康経営の推進を図っています。

参考URL:https://sustainability.idemitsu.com/ja/themes/432

健康経営実践企業の声

健康経営を実践した企業からの声は下記のとおり上がっています。

  1. 社員の満足度が高まり離職率が下がった
  2. 社員の生産性が上がり、業績向上につながっている
  3. 企業のブランド価値が向上し、事業への好影響があった
  4. 社員のリテラシーが向上し、職場風土やコミュニケーションも改善した

参考URL:https://kenko-keiei.jp/

これらの企業の声からも伺えるように、健康経営の取り組みは経営戦略の一部として不可欠であると言えます。健康経営を経営戦略に取り入れることで、従業員個々のパフォーマンス向上から組織全体の業績改善につながり、さらには企業ブランドの向上にも寄与します。

まとめ

この記事を読むことで、健康経営の戦略的重要性、健康経営銘柄の基本概念、そして2023年度に注目される健康経営銘柄とその企業戦略について理解することができたかと思います。

サントリー食品インターナショナル株式会社、ライオン株式会社、出光興産株式会社の事例は、健康経営銘柄として成功を収めるための実践的なアプローチや戦略を示す貴重な例です。これらの企業は、従業員の幸福と健康を中心に据えることで、経営成果を大きく向上させています。

健康経営の取り組みが企業の生産性向上、ブランド価値の強化、従業員のエンゲージメントの高まりといった多方面にわたるメリットをもたらすことは明白です。また、健康経営は単に企業内部に留まらず、社会全体の健康増進への貢献にもつながることを再確認しました。これは、企業が社会的責任を果たし、持続可能な発展を達成する上で不可欠な要素です。

現代の経営環境では、健康経営銘柄としての取り組みは、企業が直面する多くの課題に対処し、競争上の優位性を獲得するための重要な戦略です。健康経営は単なる一過性のトレンドではなく、企業の長期的な成功と社会的な責任を果たすための、経営者にとって必須のアプローチであることでしょう。

今後、企業は健康経営の概念をより深く理解し、その重要性を認識することが求められます。従業員の健康と幸福を重視することは、組織の持続可能性と成長のための鍵であり、企業が未来に向けて進むうえで欠かせない要素となるでしょう。このように、健康経営銘柄としての取り組みは、企業の将来的な成功に向けた戦略的なステップとして、ますます重要性を増していくことが予想されます。

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