従業員の結婚に際し、会社から渡すお祝い金は経費にできるのか、勘定科目はどうすれば良いかお悩みではありませんか。この記事では、結婚祝いを福利厚生費として非課税で経費計上するための3つの必須条件を具体的に解説します。社会通念上相当とされる金額の相場や社内規程の重要性、給与課税となるケースとの違い、仕訳例まで網羅。税務上のリスクを避け、適切に処理するための知識が身につきます。
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会社からの結婚祝いは福利厚生費として経費計上できる

従業員の結婚という喜ばしいライフイベントに際し、会社から贈られる結婚祝い金。この費用を経費として計上できるか、多くの経営者や経理担当者が悩むポイントです。結論から申し上げると、会社から従業員へ贈る結婚祝いは、一定の条件を満たすことで「福利厚生費」として経費計上することが可能です。
福利厚生費として処理できる最大のメリットは、会社と従業員の双方にあります。会社側にとっては、支払った結婚祝い金が損金として算入されるため、法人税の課税対象となる所得を減らし、節税効果が期待できます。一方、お祝いを受け取る従業員側にとっては、福利厚生費として支給された金品は給与所得とはみなされません。そのため、所得税や住民税が課税されず、社会保険料の算定基礎からも除外されるという大きな利点があります。従業員の手取り額が減ることなく、会社からのお祝いの気持ちをそのまま受け取ることができるのです。
ただし、この税務上のメリットを享受するためには、結婚祝いが「全従業員を対象としている」「社会通念上、妥当な金額である」といった複数の条件をクリアする必要があります。もしこれらの条件から外れてしまうと、福利厚生費ではなく「給与」や「交際費」として扱われ、課税対象となる可能性があるため注意が必要です。次の章からは、税務調査などで指摘を受けないために遵守すべき具体的な条件や金額の相場について、詳しく解説していきます。
会社からの結婚祝いを福利厚生費にするための3つの条件

会社から従業員へ贈る結婚祝いは、一定の条件を満たすことで税務上の「福利厚生費」として経費計上できます。福利厚生費として認められれば、会社は法人税の節税につながり、受け取った従業員は給与所得とならず所得税がかからないという双方にとってのメリットがあります。しかし、単にお祝い金を渡すだけでは認められません。税務調査で否認されることのないよう、これから解説する3つの重要な条件を必ず押さえておきましょう。
条件1 全ての従業員を対象とする
福利厚生費として認められるための大前提は、その制度が全従業員に対して公平であることです。結婚祝い金も例外ではなく、正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、すべての従業員を支給対象としなければなりません。特定の役員や一部の社員だけを対象としたお祝い金は、福利厚生とは見なされず、その人への特別な利益供与、つまり「給与」や「役員賞与」として扱われます。
給与と判断された場合、会社は源泉徴収の義務が生じ、従業員側も所得税の課税対象となります。この公平性の原則を担保するためにも、後述する慶弔見舞金規程で支給対象者を明確に「全従業員」と定めておくことが不可欠です。
条件2 社会通念上相当な金額である
結婚祝い金の金額が、常識の範囲内であることも重要な条件です。この「常識の範囲」を法律で明確に定めた金額基準はありませんが、「社会通念上、相当と認められる金額」であることが求められます。もし100万円など、あまりに高額なお祝い金を支給した場合、それはお祝いの意図を超えた実質的なボーナス(賞与)とみなされ、給与課税の対象となる可能性が非常に高くなります。
一般的な相場は会社の規模や地域によっても異なりますが、おおむね1万円から5万円程度、多くても10万円以内が一つの目安とされています。会社の業績が良いからといって、特定の従業員にだけ高額な結婚祝いを渡すと、税務署から福利厚生費として否認されるリスクがあるため注意が必要です。
条件3 慶弔見舞金規程が整備されている
結婚祝いの支給が会社の公式な制度であることを客観的に証明するために、「慶弔見舞金規程」を社内ルールとして作成し、その規程に基づいて運用することが極めて重要です。この規程がなければ、その都度の判断で恣意的に支給していると見なされ、福利厚生費としての正当性が認められにくくなります。慶弔見舞金規程には、支給の目的、対象者(全従業員であること)、支給事由(結婚、出産、弔慰など)、支給額、申請手続き、添付書類などを具体的に明記します。
例えば、「勤続3年未満は3万円、3年以上は5万円」といったように、勤続年数に応じて金額に差を設けることも、規程に明確な基準として定められていれば問題ありません。規程を整備し、従業員に周知しておくことで、公平性と透明性が担保され、税務上のリスクを大幅に軽減できます。
福利厚生費として認められる結婚祝いの金額相場

会社の結婚祝いを福利厚生費として経費計上するためには、「社会通念上相当な金額」であることが重要な条件となります。しかし、この「社会通念上相当」という表現は曖昧で、具体的にいくらまでなら問題ないのか判断に迷うところでしょう。金額の設定を誤ると、税務調査で給与と見なされ、源泉徴収漏れを指摘されるリスクもあります。ここでは、福利厚生費として認められる結婚祝い金の具体的な相場と、金額を設定する際のポイントについて詳しく解説します。
一般的な企業の相場は3万円から5万円
結婚祝い金の非課税枠として法律で明確な上限額が定められているわけではありませんが、一般的な企業の相場としては、従業員一人あたり1万円から5万円程度が目安とされています。特に、3万円を基準としている企業が多いようです。この金額は、高額すぎて給与と見なされるリスクが低く、お祝いの気持ちとしても社会的に妥当な範囲と判断されやすいためです。
会社の規模や業績によっても変動しますが、最大でも10万円を超えると税務調査で指摘される可能性が高まるため注意が必要です。これから慶弔見舞金規程を作成する、あるいは見直しを検討している場合は、まずこの3万円から5万円という相場を基準に考えると良いでしょう。
勤続年数や役職で差をつけることは可能か
結論から言うと、勤続年数や役職に応じて結婚祝い金の額に差を設けることは可能です。福利厚生は全従業員に公平であることが原則ですが、会社への貢献度に応じて支給額に合理的な差を設けることは社会通念上も認められています。ただし、これには絶対的な条件があります。それは、慶弔見舞金規程に支給基準が明確に定められていることです。
例えば、「勤続3年未満は1万円、3年以上5年未満は3万円、5年以上は5万円」や「一般社員は3万円、管理職は5万円」といった具体的なルールを規程として明文化し、全従業員がいつでも閲覧できる状態にしておく必要があります。社長の気分や特定の従業員との関係性で金額を変動させるなど、規程に基づかない恣意的な運用は認められません。そのようなケースでは、差額分や全額が給与または交際費として扱われる可能性があるため、必ず規程に則った運用を徹底しましょう。
注意 結婚祝いが福利厚生費ではなく給与や交際費になるケース

会社からの結婚祝いは、原則として福利厚生費として経費計上できます。しかし、一定の条件を満たさない場合、税務上「給与」や「交際費」として扱われる可能性があります。これらの勘定科目になると、会社側は源泉徴収義務が、従業員側は所得税の納税義務が発生するなど、税務上の取り扱いが大きく変わるため注意が必要です。ここでは、結婚祝いが福利厚生費として認められない具体的なケースについて詳しく解説します。
金額が常識の範囲を超えて高額な場合
結婚祝いが福利厚生費として認められるための重要な条件の一つに、「社会通念上相当な金額であること」が挙げられます。この「社会通念上相当」とされる金額を大幅に超えるお祝い金は、福利厚生ではなく、従業員への経済的利益の供与、すなわち「給与(賞与)」とみなされる可能性が非常に高くなります。例えば、一般的な相場が3万円~5万円であるのに対し、20万円や30万円といった高額な祝い金を支給した場合、その全額または相場を超える部分が給与課税の対象となります。
給与と判断されると、会社はその金額に対して源泉徴収を行い、従業員は所得税と住民税を負担しなければなりません。もし福利厚生費として処理していた場合、税務調査で指摘されると追徴課税のリスクが生じるため、金額設定は慎重に行う必要があります。
特定の役員など一部の人のみにお祝いを渡す場合
福利厚生費の根本的な考え方は、「すべての従業員に対して公平に提供される機会があること」です。そのため、特定の役員や一部の従業員だけを対象として結婚祝いを支給する場合、その支出は福利厚生費とは認められません。このケースでは、誰に支給したかによって勘定科目が変わります。特定の従業員個人に渡した場合は「給与」として扱われ、所得税の課税対象となります。一方、特定の役員に対して支給した場合は「役員賞与」とみなされる可能性が高く、役員賞与は原則として法人税法上、損金に算入できません。
これは会社にとって大きな税務上のデメリットとなります。また、自社の従業員ではなく、取引先の担当者やそのご家族の結婚に際してお祝いを渡す場合は、事業関係を円滑にするための費用として「交際費」として処理するのが適切です。
結婚祝い金の勘定科目と仕訳例

会社から従業員へ結婚祝いを支給した際の経理処理は、そのお祝い金が「福利厚生費」として認められるか、「給与」として扱われるかによって用いる勘定科目が異なります。ここでは、それぞれのケースにおける具体的な仕訳例を解説します。適切な会計処理を行うために、自社の結婚祝いがどちらに該当するのかを正しく判断することが重要です。
福利厚生費として処理する場合の仕訳
慶弔見舞金規程に基づき、全従業員を対象として社会通念上相当な金額の結婚祝いを支給する場合、その費用は「福利厚生費」として経費計上できます。この処理の最大のメリットは、会社側は損金として算入でき、受け取った従業員側は所得税が非課税になる点です。経理担当者としては、この非課税の恩恵を従業員が受けられるよう、適切に処理することが求められます。支払い方法が現金か振込かによって、貸方の勘定科目が変わります。
【仕訳例1:現金で3万円を支給した場合】
従業員のAさんに、結婚祝い金として現金で3万円を渡した際の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 福利厚生費 30,000円 | 現金 30,000円 |
| 摘要:従業員A 結婚祝金 | |
【仕訳例2:銀行振込で5万円を支給した場合】
従業員のBさんに、給与振込口座へ結婚祝い金として5万円を振り込んだ際の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 福利厚生費 50,000円 | 普通預金 50,000円 |
| 摘要:従業員B 結婚祝金 | |
給与課税となる場合の仕訳
支給した結婚祝いが「社会通念上、高額すぎる」「特定の役員のみが対象」といった理由で福利厚生費の条件から外れる場合、そのお祝い金は従業員への経済的利益の供与とみなされ、「給与」として扱われます。この場合、勘定科目は「給与手当」や「役員報酬」となり、受け取った従業員の所得として源泉所得税の課税対象となります。
会社側には源泉徴収義務が発生するため、経理処理には特に注意が必要です。給与計算の際に、この結婚祝い金を給与総額に含めて所得税を計算し、天引き(預り金として処理)しなくてはなりません。
【仕訳例:特定の役員に20万円を支給した場合】
福利厚生費の要件を満たさないと判断された結婚祝い金20万円を、役員のCさんに支給した際の仕訳です。この20万円は給与所得として扱われます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 役員報酬 200,000円 | 普通預金 200,000円 |
| 摘要:役員C 結婚祝金(給与課税対象) | |
この処理を行うと、役員Cさんの課税所得が20万円増えることになります。そのため、給与支払時には、通常の給与と合算した金額から源泉所得税を計算し、徴収する必要があります。従業員の手取り額に直接影響するため、なぜ給与扱いになるのかを事前に説明しておくことが、後のトラブルを避ける上で重要です。
現金以外で結婚祝いを渡す場合の税務上の扱い

従業員の結婚を祝う気持ちを形にする方法は、現金だけではありません。会社によっては、商品券や記念品などの「物品」を贈るケースも多いでしょう。しかし、現金以外のものを支給する場合、その品物によって税務上の扱いが大きく異なるため注意が必要です。
現金と同様に福利厚生費として非課税で処理できるものと、給与として扱われ所得税の課税対象となるものがあります。ここでは、代表的な「商品券・ギフト券」と「記念品などの物品」の2つのケースに分けて、それぞれの税務上のルールを詳しく解説します。
商品券やギフト券を支給する場合
JCBギフトカードやAmazonギフト券、クオカードといった商品券やギフト券を結婚祝いとして支給する場合、税務上は原則として「給与」として扱われ、受け取った従業員の所得税の課税対象となります。これは、商品券などが非常に換金性が高く、現金とほぼ同等の価値を持つと判断されるためです。たとえ慶弔見舞金規程に定めがあり、全従業員を対象としていたとしても、この扱いは変わりません。
したがって、会社は商品券を支給した月の給与計算において、その金額を給与に上乗せして所得税の源泉徴収を行う必要があります。経理処理を誤ると追徴課税のリスクもあるため、商品券等を支給する際は、福利厚生費ではなく給与として正しく処理するよう徹底しましょう。
記念品などの物品を支給する場合
お祝いの気持ちを込めて、記念品や家電製品などの「物品」を贈る場合は、商品券とは扱いが異なります。社会通念上相当と認められる金額の範囲内であり、かつ換金性が低いものであれば、福利厚生費として非課税で処理することが可能です。例えば、ペアの食器やフォトフレーム、自社のロゴが入った記念品などがこれに該当します。
一方で、自由に商品を選べるカタログギフトや、宝飾品、金地金といった換金性の高いものは、金額にかかわらず給与とみなされる可能性が高いため避けるのが賢明です。物品を支給する際は、あくまで「記念品」としての性格が強く、誰もが納得できる常識的な品物と金額の範囲に収めることが、福利厚生費として認められるための重要なポイントとなります。
まとめ

会社からの結婚祝いは、適切なルールのもとで運用すれば、福利厚生費として経費計上することが可能です。そのための重要な条件は「全従業員を対象とすること」「社会通念上相当な金額であること」「慶弔見舞金規程が整備されていること」の3点です。これらの基準を満たすことで、税務上のリスクを回避し、公平な制度運用が実現します。
一般的な相場は3万円から5万円ですが、この範囲を大きく超えたり、特定の役員のみを対象としたりすると、給与や交際費と見なされ課税対象となるため注意が必要です。また、商品券は給与扱いになるなど、現金以外で支給する場合の税務上の扱いも異なります。この記事で解説したポイントを踏まえ、自社の規程を明確に定め、従業員のライフイベントを祝福する文化を育んでいきましょう。適切に運用された福利厚生は、従業員のエンゲージメントを高め、企業の持続的な成長にも貢献するはずです。