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第三の賃上げとは?給与以外の賃上げ施策とその可能性

「第三の賃上げ」とは、基本給や賞与とは別の、福利厚生の充実などを通じて従業員の実質的な手取り額を高める施策です。本記事では、なぜ今この取り組みが注目されるのか、食事補助やリスキリング支援といった具体的な施策例から、企業が導入するメリット、国内企業の先進事例を解説します。物価高騰下で従業員の生活を守り、人材確保と定着に繋がる「第三の賃上げ」の可能性と実践のポイントがわかります。

Contents

第三の賃上げとは何か 基本を解説

近年、経済ニュースや企業の取り組みで頻繁に耳にするようになった「第三の賃上げ」。これは、従来の給与や賞与といった直接的な金銭の支給とは異なるアプローチで、従業員の生活水準や働きがいを向上させる新しい賃上げの形です。具体的には、食事補助や住宅手当といった福利厚生の拡充、スキルアップを支援する教育機会の提供などを通じて、従業員が実質的に使えるお金(可処分所得)を増やし、将来のキャリア形成を後押しすることを目的としています。物価高や人材獲得競争が激化する現代において、企業が持続的に成長し、従業員に選ばれ続けるための重要な経営戦略として注目を集めています。

第一の賃上げ・第二の賃上げとの違い

「第三の賃上げ」を理解するためには、まず「第一の賃上げ」と「第二の賃上げ」との違いを明確にすることが重要です。それぞれの特徴は以下の通りです。

第一の賃上げは、基本給を一律で引き上げる「ベースアップ(ベア)」や、年齢・勤続年数に応じて給与が上がる「定期昇給」を指します。これは毎月の給与に直接反映される、最も基本的かつ恒久的な賃上げです。従業員にとっては生活の基盤となる安定した収入増に繋がり、将来の生活設計を立てやすくなるというメリットがあります。

第二の賃上げは、「賞与(ボーナス)」や「一時金」の支給を指します。企業の業績に応じて支給額が変動するのが一般的で、短期的な業績向上を従業員に還元するための、一時的な賃上げと位置づけられます。従業員のモチベーション向上に繋がりやすい一方で、業績が悪化すれば減額や不支給の可能性もあるため、安定性には欠けます。

これに対し第三の賃上げは、現金支給ではなく「非金銭報酬」や「福利厚生」という形で価値を提供する点に最大の違いがあります。食事補助や住宅手当は生活コストの削減に直結し、可処分所得の増加と同じ効果をもたらします。また、リスキリング支援などは、従業員の市場価値を高め、長期的なキャリアの安定に貢献します。このように、第三の賃上げは、従業員の現在と未来を多角的に支える新しいアプローチなのです。

なぜ今「第三の賃上げ」が注目されるのか その背景

現在、多くの企業が「第三の賃上げ」に注目し、導入を進めている背景には、現代社会が抱える複数の経済的・社会的な課題があります。第一に挙げられるのが、歴史的な物価高騰による実質賃金の低下です。給与(名目賃金)が多少上がっても、それ以上に物価が上昇すれば、買えるモノやサービスの量は減ってしまい、生活は苦しくなります。この状況下で、所得税や社会保険料の負担がかかりにくい食事補助や社宅提供といった福利厚生は、従業員の生活を直接的に防衛する有効な手段となります。

第二に、深刻な人手不足と激化する人材獲得競争があります。少子高齢化により労働力人口が減少する中、優秀な人材の確保は企業の最重要課題です。高い給与を提示するだけでは他社との差別化が難しくなっており、働きがいやスキルアップ機会、ウェルビーイングの向上といった付加価値が、企業選びの重要な判断基準になっています。第三の賃上げは、企業の魅力を高め、人材の採用と定着に大きく貢献します。

さらに、働き方の多様化と従業員の価値観の変化も見逃せません。リモートワークの普及などを経て、従業員は金銭的な報酬だけでなく、ワークライフバランスや自己成長、心身の健康を重視するようになりました。企業が従業員一人ひとりの多様なニーズに応え、エンゲージメントを高める上で、第三の賃上げに含まれる柔軟な働き方の支援や学びの機会提供は不可欠な要素となっているのです。これらの背景から、第三の賃上げは単なるトレンドではなく、持続可能な経営に必須の戦略として位置づけられています。

第三の賃上げに含まれる具体的な施策例

「第三の賃上げ」は、給与のベースアップや賞与といった直接的な金銭支給とは異なる、多岐にわたるアプローチを含みます。ここでは、従業員の生活を豊かにし、企業の持続的な成長を支える具体的な施策を「生活支援」「スキルアップ」「働きがい」の3つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。

従業員の生活を直接支援する施策

物価上昇が続く中、従業員の生活コスト負担を軽減し、実質的な手取り額を増やすための施策は非常に重要です。これらの施策は、福利厚生として提供されることが多く、従業員の生活基盤を安定させることで、安心して業務に集中できる環境を整える効果が期待できます。

食事補助や社食の提供

毎日のランチ代は、従業員にとって決して小さくない負担です。企業が食事補助を行うことで、この負担を直接的に軽減できます。具体的な方法としては、社員食堂の設置や運営、提携業者からの弁当提供、食事券の配布、または「チケットレストラン」のような外部の福利厚生サービスを利用するケースが挙げられます。一定の要件を満たせば、食事補助は非課税となるため、企業と従業員双方にとって税制上のメリットが大きいのが特徴です。栄養バランスの取れた食事を提供することで、従業員の健康増進に寄与し、共に食事をする機会は社内コミュニケーションの活性化にも繋がります。

住宅手当や社宅制度の拡充

家賃は家計支出の中で大きな割合を占めるため、住宅関連の補助は従業員の生活安定に直結する効果的な施策です。一般的な住宅手当として給与に上乗せして支給する方法のほか、企業が物件を借り上げて社宅として提供する「借り上げ社宅制度」が注目されています。この制度は、従業員が家賃の一部を負担するだけで住居を確保でき、企業が負担した家賃分は給与所得と見なされないため、従業員の所得税や社会保険料の負担が増えないという大きな利点があります。特に、若手社員や地方からの採用者にとって魅力的な制度であり、人材の確保・定着に大きく貢献します。

通勤手当の見直し

リモートワークの普及など働き方が多様化する中で、通勤手当のあり方も見直しの時期に来ています。従来の一律の定期代支給から、出社日数に応じた実費精算へ切り替えることで、従業員間の不公平感を解消できます。また、リモートワークが主体の従業員に対しては、光熱費や通信費を補助する「在宅勤務手当」を新設することで、新たな働き方を積極的に支援する姿勢を示すことができます。さらに、ガソリン価格の高騰を受けてマイカー通勤者の手当を見直すなど、社会情勢の変化に柔軟に対応することも、従業員の満足度向上に繋がる重要な取り組みです。

スキルアップとキャリア形成を後押しする施策

従業員の成長は、企業の成長の原動力です。目先の生活支援だけでなく、従業員一人ひとりの市場価値を高め、将来的なキャリアの可能性を広げるための「未来への投資」としての施策も、第三の賃上げの重要な柱となります。

リスキリング教育の機会提供

DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速や事業構造の変化に対応するため、従業員が新しい知識やスキルを習得する「リスキリング」の重要性が高まっています。企業が主体となって、オンライン学習プラットフォーム(eラーニング)の導入、外部の専門研修への参加費用補助、あるいは社内での勉強会やワークショップを企画・開催することが有効です。従業員が自律的に学び、成長できる環境を提供することは、個人のキャリアを豊かにするだけでなく、組織全体の競争力強化に直結します。変化の激しい時代を勝ち抜くために不可欠な、未来志向の投資と言えるでしょう。

資格取得支援制度

業務に関連する専門資格の取得を奨励することは、従業員のスキルアップとモチベーション向上に効果的です。制度の具体例としては、資格試験の受験費用の全額または一部補助、教材購入費のサポート、合格した際の報奨金(お祝い金)の支給、そして毎月の給与に上乗せされる資格手当などが挙げられます。従業員が専門性を高めることで、業務の質が向上し、顧客からの信頼獲得にも繋がるというメリットがあります。どの資格を対象とするかを明確にし、従業員のキャリアプランと連動させることで、より戦略的で効果的な制度運用が可能になります。

働きがいとエンゲージメントを高める施策

金銭的な報酬や物質的な支援だけでなく、「この会社で働き続けたい」と思えるような魅力的な労働環境を整備することも、広義の賃上げと捉えることができます。従業員のエンゲージメントを高め、心身の健康を維持するための施策は、人材の定着と生産性向上に欠かせません。

柔軟な働き方の導入(リモートワーク・フレックスタイム)

従業員が自身のライフスタイルに合わせて働く時間や場所を選べる制度は、ワークライフバランスを向上させる上で極めて有効です。リモートワークは通勤時間の削減に、フレックスタイム制度は育児や介護との両立に大きく貢献します。時間や場所に縛られない働き方を認めることは、従業員の自律性を尊重し、優秀な人材の獲得や離職防止に大きな効果を発揮します。ただし、制度を導入するだけでなく、円滑なコミュニケーションを促すITツールの整備や、時間ではなく成果で評価する人事評価制度への見直しをセットで行うことが成功の鍵となります。

ウェルビーイング向上のための取り組み

ウェルビーイングとは、従業員が身体的、精神的、そして社会的に良好な状態にあることを意味します。企業が従業員の健康と幸福を支援する取り組みは、組織全体の活力を生み出します。具体的には、法定の健康診断に加えて人間ドックの費用を補助する制度、カウンセラーに気軽に相談できるメンタルヘルスサポート窓口の設置、フィットネスクラブの利用料補助などが考えられます。また、リフレッシュ休暇やアニバーサリー休暇といった独自の特別休暇制度を設けることも、従業員の心身の健康維持に繋がり、エンゲージメント向上に寄与します。

企業が第三の賃上げを導入するメリット・デメリット

第三の賃上げは、従業員の満足度を高めるだけでなく、企業側にも多くの恩恵をもたらします。しかし、導入にあたっては注意すべき点も存在します。ここでは、企業が第三の賃上げを導入する際に得られるメリットと、事前に把握しておくべきデメリットや注意点を具体的に解説します。

企業側のメリット

第三の賃上げを導入する最大のメリットは、採用競争力の強化と優秀な人材の定着に繋がることです。人手不足が深刻化する現代において、基本給以外の魅力的な非金銭報酬は、求職者に対する強力なアピールポイントとなります。特に、働きがいやスキルアップを重視する層に響きやすく、企業の採用ブランディング向上に貢献します。また、従業員のエンゲージメントや満足度が高まることで離職率が低下し、リテンション(人材定着)効果も期待できます。さらに、従業員のウェルビーイングが向上すれば、心身の健康増進が仕事への集中力や創造性を高め、組織全体の生産性向上に直結します。従業員を大切にする姿勢は、人的資本経営の観点からも評価され、投資家や顧客からの信頼獲得、ひいては企業価値の向上にも繋がるでしょう。

導入時の注意点とデメリット

第三の賃上げを導入する際には、いくつかの注意点とデメリットが存在します。まず、新たな制度の導入・運用には相応のコストと手間がかかる点が挙げられます。例えば、社食の設置や外部研修プログラムの契約には初期投資や継続的な費用が発生し、人事部門の管理工数も増加します。次に、従業員間の公平性をいかに担保するかという課題です。住宅手当やリモートワーク制度は、従業員の居住形態や職種によって利用可否が分かれるため、恩恵を受けられない従業員から不満の声が上がる可能性があります。このような不公平感は、かえって組織の士気を下げるリスクを伴います。また、導入した施策が本当に従業員のニーズに合っているか、そして生産性向上に繋がっているかを測定するのは容易ではありません。従業員が本当に求めているのは「手取り額の増加」である可能性も考慮し、金銭的な賃上げとのバランスを考えた慎重な制度設計が不可欠です。

国内企業の「第三の賃上げ」導入事例

物価上昇が続くなか、従業員の生活を支え、エンゲージメントを高める「第三の賃上げ」は、企業規模を問わず広がりを見せています。ここでは、先進的な取り組みで知られるIT企業から、工夫次第で導入可能な中小企業の事例まで、具体的な企業の取り組みを詳しくご紹介します。これらの事例は、自社で福利厚生や人材戦略を検討する際の貴重なヒントとなるでしょう。

IT企業の先進的な取り組み事例

人材獲得競争が激しいIT業界では、独自の「第三の賃上げ」施策で他社との差別化を図る企業が目立ちます。例えば、GMOインターネットグループ株式会社は、無料でランチやドリンクを提供するコミュニケーションスペースを運営しており、従業員の食費負担を軽減することで実質的な可処分所得の向上に貢献しています。また、サイボウズ株式会社では、働き方や働く場所を従業員が自由に選択できる制度を導入し、個々のライフスタイルを尊重することで働きがいを高めています。これらの施策は、単なる金銭的な支援にとどまらず、従業員満足度の向上を通じて、生産性アップや優秀な人材の定着に繋がっている点が特徴です。最先端のIT企業は、福利厚生を経営戦略の一環と捉え、積極的に投資を行っています。

中小企業でも可能な導入事例

「第三の賃上げ」は大企業だけのものではありません。限られた予算の中でも、工夫次第で従業員の満足度を大きく高めることが可能です。例えば、多くの企業が導入しているのが、食事補助サービスを活用した昼食代のサポートです。企業が半額を負担する非課税の福利厚生制度を利用すれば、従業員は実質的な手取り額が増え、企業側も税制上のメリットを受けられます。また、従業員の成長を支援する資格取得支援制度や書籍購入補助制度は、比較的低コストで始められるリスキリング施策として有効です。さらに、アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇といった独自の特別休暇制度を設けることも、コストを抑えつつ従業員のウェルビーイングを向上させる効果的な一手と言えるでしょう。これらの施策は、企業の採用競争力を高め、従業員の定着率を改善する重要な鍵となります。

まとめ

「第三の賃上げ」は、物価高騰や人材獲得競争が激化する現代において、企業が持続的に成長するための重要な経営戦略です。本記事で解説したように、これは従来の給与(第一の賃上げ)や賞与(第二の賃上げ)だけでなく、食事補助や住宅手当、リスキリング支援、柔軟な働き方の導入といった、従業員の可処分所得やウェルビーイングを向上させる非金銭的な施策を指します。これらの取り組みは、従業員の生活を直接的に支え、エンゲージメントを高めることで、結果として人材の定着や生産性向上といった形で企業にも大きなメリットをもたらします。

大企業だけでなく、中小企業においても自社の実情に合わせて導入できる施策は数多く存在します。従業員に選ばれ、共に成長していく企業となるために、「第三の賃上げ」を単なる福利厚生ではなく未来への戦略的投資と捉え、積極的に検討していくことが、これからの時代を勝ち抜く鍵となるでしょう。

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