月額3,500円の食事補助は、非課税制度を最大限に活用し、企業と従業員の双方に大きなメリットをもたらす福利厚生です。この記事では、なぜ3,500円が上限なのかという非課税の仕組みから、人材定着や節税に繋がる効果、具体的な導入サービス、経理上の注意点を解説します。制度導入で失敗しないためのポイントがすべてわかります。
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食事補助の「月額3500円」とは?非課税制度の仕組みを解説

企業の福利厚生として注目を集める「食事補助」。その中でも「月額3500円」という金額は、制度を検討する上で非常に重要なキーワードとなります。これは、所得税法で定められた、企業が従業員に提供する食事補助を非課税として扱える上限額だからです。
つまり、一定の条件を満たせば、企業が補助した月額3,500円までの食事代は従業員の給与所得に含まれず、所得税がかかりません。この制度を正しく理解し活用することで、企業は従業員の可処分所得を実質的に増やし、満足度を向上させることができます。本章では、この非課税制度の根幹となる仕組みと、その適用を受けるための具体的な条件について詳しく解説します。
食事補助を非課税にするための2つの条件
食事補助を福利厚生費として非課税で提供するためには、単に月額3,500円を補助すれば良いというわけではありません。国税庁によって定められた、以下の2つの要件を「両方とも」満たす必要があります。どちらか一方でも満たしていない場合、企業が補助した金額の全額が給与として扱われ、課税対象となってしまうため注意が必要です。この条件は、社員食堂での現物支給だけでなく、提携先の飲食店で利用できる食事券や電子マネータイプのサービスを導入する場合にも同様に適用されます。ここでは、それぞれの条件について具体的な例を交えながら、その内容を正確に見ていきましょう。
条件1 従業員が食事価額の半分以上を負担すること
一つ目の条件は、食事の価額の50%以上を従業員本人が負担していることです。企業側の補助額が、食事代の半分未満でなければならない、とも言い換えられます。例えば、1食あたりの価格が700円のランチを提供する場合、従業員は少なくともその半額である350円以上を支払う必要があります。
この場合、企業が補助できる金額は最大で350円までとなります。もし従業員の負担額が349円以下であれば、差額の351円だけでなく、企業が補助した金額すべてが給与として課税されてしまいます。このルールは、あくまで「食事」という現物支給に対する補助が前提であり、従業員の生活費を補填する給与とは明確に区別するための重要な基準となっています。
条件2 企業の補助額が月額3500円(税抜)以下であること
二つ目の条件は、企業が負担する補助額が、1ヶ月あたり3,500円(消費税抜)以下であることです。これは従業員一人当たりの上限額を定めたものです。先ほどの条件1「従業員負担が半分以上」を満たしていても、1ヶ月の補助額の合計が3,500円を超えてしまうと、その超過分だけではなく、補助した金額の全額が課税対象となります。
例えば、1食700円の食事に対し、従業員が400円、企業が300円を補助するケースを考えます。この従業員が月に20回この補助を利用した場合、企業からの補助額の合計は300円×20回=6,000円となります。この場合、月の上限である3,500円を超えているため、補助された6,000円の全額が給与所得として扱われます。非課税の恩恵を受けるためには、2つの条件を同時に満たす制度設計が不可欠です。
企業が食事補助3500円制度を導入する5つのメリット

月額3,500円の食事補助は、単に従業員の昼食代を補助するだけの制度ではありません。企業にとっては、人材戦略や組織力強化、さらには節税対策にも繋がる、費用対効果の非常に高い「戦略的投資」と位置づけることができます。ここでは、企業がこの非課税の食事補助制度を導入することで得られる5つの具体的なメリットについて、多角的な視点から詳しく解説します。
メリット1 従業員満足度の向上と人材定着
食事は、従業員の生活に直結する重要な要素です。昨今の物価高騰の中、企業からの食事補助は実質的な手取り額の増加として従業員の家計を直接的に支えます。これは、昇給や賞与とは異なる形で、日々の生活の中で企業の支援を実感できる機会となります。会社が従業員の健康や生活を大切にしているというメッセージが伝わることで、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)や組織への帰属意識が高まります。従業員の生活を直接的に支え、エンゲージメントを高める重要な施策である食事補助は、働きがいのある職場環境を構築し、優秀な人材の離職を防ぎ、長期的な人材定着に大きく貢献するでしょう。
メリット2 採用活動における競争力強化
求職者が企業を選ぶ際、給与や業務内容だけでなく「福利厚生の充実度」を重視する傾向が年々強まっています。数ある福利厚生の中でも、「食事補助」は求職者にとって非常に分かりやすく、日々の生活に直結するため魅力的に映ります。求人情報に「非課税の食事補助あり」と明記するだけで、他社との明確な差別化を図ることが可能です。特に、独自の社員食堂を持つことが難しい中小企業であっても、食事券やアプリ型のサービスを利用すれば手軽に導入できます。求職者にとって魅力的で分かりやすい福利厚生として、採用ブランディングに大きく貢献し、優秀な人材を獲得するための強力な武器となるのです。
メリット3 福利厚生費としての計上で節税効果が見込める
食事補助を導入する大きなメリットの一つが、税制上の優遇措置です。非課税の条件(従業員が半額以上を負担し、企業の補助額が月額3,500円以下)を満たせば、企業が負担した金額は給与ではなく「福利厚生費」として経費計上できます。福利厚生費は損金として扱われるため、法人税の課税対象となる所得を圧縮し、結果として法人税の節税に繋がります。さらに、給与ではないため社会保険料の算定基礎からも除外されます。これは、企業と従業員双方の社会保険料負担を軽減する効果ももたらします。法人税や社会保険料の負担を軽減し、企業の財務体質を強化する上で、食事補助は非常に有効な手段と言えるでしょう。
メリット4 従業員の健康増進と生産性向上
食事補助制度は、従業員の健康を支え、組織全体の生産性を向上させる「健康経営」の一環としても極めて有効です。補助があることで、従業員は価格を気にせず栄養バランスの取れたランチを選択しやすくなります。コンビニの菓子パンやカップ麺で昼食を済ませていた従業員が、定食や栄養価の高い弁当を選ぶようになれば、長期的な健康維持・増進に繋がります。健康な心身は、午後の業務における集中力やパフォーマンスの維持に不可欠です。従業員の健康を土台とした、持続的な生産性向上を実現することで、病気による欠勤率の低下や、心身の不調を抱えながら働く「プレゼンティーイズム」の改善も期待できます。
メリット5 社内コミュニケーションの活性化
食事補助は、社内のコミュニケーションを活性化させるきっかけにもなります。例えば、社員食堂や提携先の飲食店を利用する制度を導入すれば、従業員が一緒にランチに出かける機会が増えます。普段は業務上の接点がない他部署のメンバーや、異なる役職の社員と食卓を囲むことで、自然な会話が生まれます。こうした偶発的なコミュニケーションは、新たなアイデアの創出や部門間の連携強化、風通しの良い組織風土の醸成に繋がります。部署や役職の垣根を越えたコミュニケーションを促し、組織の一体感を醸成することは、円滑な業務遂行とイノベーションの促進に不可欠な要素です。
従業員側から見た食事補助3500円のメリット

企業が食事補助制度を導入することは、従業員にとって日々の生活に直結する大きなメリットをもたらします。単なる金銭的な支援にとどまらず、可処分所得の増加や生活の質の向上に繋がり、仕事へのモチベーションにも良い影響を与えるでしょう。ここでは、従業員が実際に享受できる具体的なメリットを2つの側面から詳しく解説します。
実質的な手取り額が増加する
食事補助制度の最大の魅力は、給与として受け取る場合と異なり、所得税や住民税、社会保険料の算定基礎に含まれない点です。例えば、給与が3,500円昇給した場合、その金額に対して所得税や住民税、社会保険料が課されるため、手取り額は3,500円よりも少なくなります。しかし、非課税の食事補助として月額3,500円の補助を受けた場合、その金額はまるごと食事のために利用できます。
これは、実質的に可処分所得が増えることを意味し、従業員にとっては額面以上の価値があると言えるでしょう。毎月の固定費である食費の負担が軽減されることで、経済的な余裕が生まれ、貯蓄や自己投資に回すなど、ライフプランの選択肢も広がります。
ランチの選択肢が広がり生活の質が向上する
毎日のランチ代は、従業員にとって決して小さくない出費です。食事補助制度があることで、この経済的な負担が大幅に軽減されます。これまで節約のためにワンコインランチや手作りのお弁当に限定していた人も、気兼ねなくレストランで栄養バランスの取れた定食を選んだり、話題のカフェでランチを楽しんだりできるようになります。
経済的な負担を気にせず、その日の気分や体調に合わせて健康的で満足度の高い食事を選べることは、日々の生活の質(QOL)を大きく向上させます。また、栄養バランスの整った昼食を摂ることは、午後の業務における集中力や生産性の維持にも繋がり、心身の健康増進という観点からも非常に大きなメリットです。
食事補助3500円制度の導入方法とサービスの種類

月額3,500円の非課税枠を活用した食事補助制度を導入するには、いくつかの方法があります。かつては社員食堂が主流でしたが、働き方の多様化に伴い、より柔軟で導入しやすいサービスが登場しています。企業の規模や従業員の勤務形態、オフィスの立地などを考慮し、自社に最適なサービスを選択することが重要です。ここでは、代表的な3つの導入方法とその特徴、具体的なサービス例を詳しく解説します。
社員食堂(設置型)
社員食堂は、企業が自社内や近隣に専用の厨房設備と食事スペースを設けて、従業員に食事を提供する伝統的な方法です。栄養士が監修したバランスの良いメニューを提供できるため、従業員の健康増進に直接的に貢献できる点が最大の魅力です。また、部署や役職を超えた従業員が集まるコミュニケーションの場としても機能し、組織の一体感を醸成する効果も期待できます。
一方で、設置には厨房設備の導入やスペースの確保など多額の初期投資が必要となり、運営にも食材費や人件費といったランニングコストが継続的に発生します。そのため、ある程度の企業規模がなければ導入は難しく、また、テレワークや外勤が多い従業員は利用できないという不公平感が生じやすいという側面もあります。
食事券・チケット型サービス(チケットレストランなど)
食事券・チケット型は、提携している全国の飲食店やコンビニエンスストアで利用できる専用の食事券やICカードを従業員に配布するサービスです。代表的なサービスとして、エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」が広く知られています。この方法のメリットは、社員食堂のような大規模な設備投資が不要で、比較的低コストかつ手軽に導入できる点です。
従業員は加盟店の幅広い選択肢の中から、その日の気分に合わせて好きなランチを選ぶことができます。勤務地や居住地に関わらず、全国の加盟店で利用できるため、外勤やリモートワークの従業員にも公平に福利厚生を提供できる点も大きな強みです。ただし、利用が加盟店に限定される点や、紙のチケットの場合は管理や配布に手間がかかる可能性がある点には留意が必要です。
電子マネー・アプリ型サービス(どこでも食堂など)
電子マネー・アプリ型は、スマートフォンアプリや既存の電子マネーと連携して食事代を補助する、最も新しい形態のサービスです。従業員は普段利用している飲食店で食事をし、アプリを通じてレシートを申請したり、専用の決済機能を使ったりすることで補助を受けられます。このサービスの最大の利点は、導入企業側の管理の手間が大幅に削減されることと、従業員側の利便性が非常に高いことです。
利用履歴は自動でデータ化されるため、経理処理の負担が軽減されます。また、利用できる店舗の制約が少なく、従業員はランチの選択肢を大きく広げることができます。リモートワーク中の従業員が自宅近くの店で利用することも容易なため、現代の多様な働き方に最もフィットした食事補助の形と言えるでしょう。サービスによっては初期費用や月額利用料が発生しますが、その利便性から導入する企業が増加しています。
導入前に確認すべき食事補助3500円制度の実務上の注意点

月額3,500円の食事補助は、企業と従業員の双方に多くのメリットをもたらす魅力的な福利厚生制度です。しかし、その恩恵を最大限に受けるためには、国税庁が定める厳格なルールを正しく理解し、遵守する必要があります。もし運用方法を誤ると、非課税のつもりが給与として課税され、追徴課税のリスクを負うことにもなりかねません。ここでは、人事・経理担当者が制度導入前に必ず確認すべき実務上の重要な注意点を3つのポイントに絞って詳しく解説します。
現金での支給は給与として課税対象になる
食事補助を非課税にする上で最も重要な原則は、現金での支給は認められないという点です。「食事手当」や「ランチ代補助」といった名目で従業員に現金を渡した場合、それは福利厚生費ではなく給与所得として扱われます。給与とみなされると、所得税や住民税の課税対象となるだけでなく、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の算定基礎にも含まれてしまいます。
これにより、従業員の手取りが減るだけでなく、企業の社会保険料負担も増加するため、節税メリットが失われてしまいます。非課税の恩恵を受けるためには、社員食堂での食事提供(現物支給)や、提携先の飲食店で利用できる食事券、専用のICカード・スマートフォンアプリなどを通じて、食事そのものや食事と引き換えられるサービスを提供する必要があります。
非課税枠を超えた場合の経理処理
企業の補助額が月額3,500円(税抜)を超えた場合の経理処理には、特に注意が必要です。もし補助額が非課税限度額を1円でも超えてしまうと、超えた金額だけでなく、企業が補助した金額の全額が給与として課税対象となります。例えば、ある月の食事代金が8,000円で、従業員が4,000円を負担し、企業が4,000円を補助したとします。
この場合、企業の補助額が3,500円を超えているため、補助した4,000円の全額が給与所得として扱われ、源泉徴収の対象となります。このような事態を避けるためには、従業員一人ひとりの利用状況を正確に管理し、月々の補助額が上限を超えないような運用ルールを設計することが不可欠です。導入するサービスが、上限額を自動で管理できる機能を持っているかどうかも、選定の際の重要なポイントとなるでしょう。
深夜勤務者への夜食提供のルール
通常の勤務時間外である深夜(おおむね午後10時から翌日午前5時まで)に働く従業員への食事補助には、特別なルールが存在します。深夜勤務の時間帯は社員食堂が営業していなかったり、近隣の飲食店が閉まっていたりと、食事の現物支給が困難なケースが少なくありません。このような状況を考慮し、深夜勤務者に対しては、1食あたり300円(税抜)以下の金額を現金で支給しても、給与として課税されないという特例が認められています。
これはあくまで、夜食の現物支給が難しい場合の例外的な措置です。この特例を適用する場合でも、企業は従業員の勤務実績を正確に把握し、夜食代として適切な金額を支給していることを証明できるようにしておく必要があります。24時間稼働の工場やコールセンターなど、夜勤者がいる企業では、この特例について正しく理解しておくことが重要です。
まとめ

月額3,500円の食事補助は、非課税の条件を正しく理解し活用することで、企業と従業員の双方に大きなメリットをもたらす強力な福利厚生制度です。企業にとっては、従業員満足度の向上による人材定着や採用競争力の強化、さらには福利厚生費としての計上による節税効果など、経営課題の解決に貢献します。一方、従業員にとっては、実質的な手取りが増え、日々のランチの選択肢が広がることで生活の質を豊かにします。
導入方法は社員食堂だけでなく、「チケットレストラン」に代表される食事券やアプリ型のサービスなど多様化しており、企業の規模や状況に応じた選択が可能です。ただし、非課税の恩恵を最大限に受けるには、現金支給を避けるといった実務上のルール遵守が不可欠です。物価上昇が続く現代において、食事補助は単なるコストではなく、従業員の健康とエンゲージメントを高める未来への投資です。本制度を戦略的に導入し、企業の持続的な成長を実現しましょう。