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法定福利費の割合はどれくらい?計算方法と目安をわかりやすく紹介

法定福利費が給与の何パーセントになるのか、健康保険・厚生年金などの最新料率を踏まえた具体的計算方法と業種別平均を一読で把握できます。さらに助成金活用や給与設計の見直しにより企業負担を実質的に抑えられるポイントも提示し、結論として一般企業の法定福利費は概ね標準報酬の15%前後が目安となることを示します。記事内の年収300万円・500万円の試算シートで自社負担額が試算でき、労務コストの予算策定に役立ちます。

Contents

法定福利費とは

法定福利費とは、労働基準法や健康保険法などの公的制度にもとづき、企業が従業員の給与総額に対して必ず負担しなければならない社会保険料・労働保険料の総称です。医療・年金・雇用の安定や労働災害時の補償といった従業員とその家族の生活を守るセーフティネットとして機能し、採用力の向上や離職防止など企業の人材戦略にも直結します。

法定福利費の定義と目的

法定福利費は、健康保険・厚生年金保険・介護保険などの社会保険料と、雇用保険・労災保険などの労働保険料を合わせた費用を指します。法律で「企業と従業員が保険料を折半または所定割合で負担する」と定められており、企業側は毎月の給与計算時に自社負担分を計上し、所轄の年金事務所や労働局へ納付する義務があります。

目的は大きく二つあります。第一に、医療費・年金・失業給付・労災補償などの公的給付を安定的に財源確保すること。第二に、従業員が安心して働ける環境を整え、労働市場全体の安全性と流動性を高めることです。結果として企業は、優秀な人材を確保しやすくなり、組織の持続的成長につながります。

法定福利費の内訳(社会保険料と労働保険)

法定福利費は大きく「社会保険料」「労働保険料」に区分されます。

社会保険料には、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料が含まれます。これらは主に医療サービスや老後の所得保障を目的とした保険制度で、企業と従業員がほぼ折半の割合で負担します。

一方、労働保険料は雇用保険料と労災保険料で構成され、失業・休業時の生活保障や業務上災害の補償を行います。雇用保険は企業と従業員の双方が負担するのに対し、労災保険は全額が企業負担である点が特徴です。

これらの費用は人件費に含まれる固定的コストとして毎月発生し、企業は保険料率の改定や従業員数・賃金の増減に応じて適切に予算化・経理処理を行う必要があります。

法定福利費の構成要素

健康保険の保険料率と企業負担

保険料率の目安

協会けんぽ(全国健康保険協会)の令和6年度平均保険料率は約10.00%で、都道府県ごとに9.43%〜10.82%の範囲で設定されています。健康保険組合に加入している企業の場合、組合独自の料率が適用されるケースも多く、平均より高い場合も低い場合もあります。

企業負担のしくみ

健康保険料は従業員と企業が折半(50%ずつ)する仕組みで、企業負担分はおおむね4.7%〜5.4%に収まります。支払基礎となる標準報酬月額は毎年7月に定時決定が行われ、賞与にも標準賞与額を掛けて保険料を計算します。

厚生年金保険の保険料率と企業負担

保険料率の目安

厚生年金保険の保険料率は18.30%(令和6年現在)で全国一律です。法改正により段階的に引き上げられてきましたが、平成29年以降は同率を維持しています。

企業負担のしくみ

健康保険と同じく従業員と企業が折半し、企業負担は9.15%となります。標準報酬月額の上限は65万5,000円(令和6年度)で、高額報酬者の保険料も上限を超えて徴収されることはありません。

雇用保険の保険料率と企業負担

保険料率の目安

雇用保険料率は事業区分ごとに異なり、令和6年度の一般の事業は1.55%です。このうち従業員負担0.6%・企業負担0.95%に分かれます。建設業・農林水産業などの特定業種では料率が高く設定されています。

企業負担のしくみ

雇用保険は失業給付のほか、育児休業給付や教育訓練給付などの重要な財源となるため、労使で異なる負担率が設定されています。年度途中で料率改定が行われることがあるため、人件費シミュレーションを行う際は厚生労働省が発表する最新料率を確認する必要があります。

労災保険の保険料率と企業負担

保険料率の目安

労災保険料率は0.25%〜8.8%の範囲で業種別に細分化されています。低リスクの情報通信業は0.3%前後、高リスクの建設業では5%を超える場合もあり、実際の料率は厚生労働省告示の業種番号で確認します。

企業負担のしくみ

労災保険は全額を企業が負担し、従業員負担は一切ありません。年間見込み賃金総額に対して概算で納付し、翌年度に確定精算を行う仕組みです。

介護保険の適用範囲と負担率

適用範囲

介護保険料は40歳以上65歳未満の被保険者に課され、健康保険料に上乗せして徴収されます。なお、65歳以上の第1号被保険者は市町村から直接納付書が送付されるため、企業経由の天引きは行われません。

負担率の目安

協会けんぽの介護保険料率は1.82%(令和6年度)で、その50%(0.91%)が企業負担となります。健康保険料率が低い都道府県でも介護保険料率は全国一律です。

以上の5つの保険料が法定福利費の主要構成要素となり、それぞれに異なる料率・負担割合・計算方法が存在します。最新の告示を確認しながら経営計画に反映することが、人件費コントロールの第一歩です。

法定福利費 何パーセントが目安?

法定福利費は企業が従業員のために負担する社会保険料・労働保険料の総称で、給与総額に対しておおむね15%前後が目安とされています。ただし、この比率は保険料率の改定や従業員構成によって変動するため、自社の実態を踏まえた試算が不可欠です。

給与に対する法定福利費の平均割合

厚生労働省「毎月勤労統計調査」や日本商工会議所の調査データを基にすると、令和5年度の民間企業における法定福利費の平均負担割合は15.2%でした。この数値は以下の要素を合算したものです。

主な社会保険料率の内訳(令和5年度)

  • 健康保険料率(協会けんぽ・全国平均):10.00%(うち企業負担5.00%)
  • 厚生年金保険料率:18.30%(うち企業負担9.15%)
  • 介護保険料率:1.82%(40~64歳被保険者に適用、うち企業負担0.91%)

主な労働保険料率の内訳(令和5年度)

  • 雇用保険料率:1.35%(うち企業負担0.95%、労働者負担0.40%)
  • 労災保険料率:0.25~8.80%(平均0.60%、全額企業負担)

上記を標準的なモデルで合算すると、企業負担分のみで約15%に達します。従業員が介護保険の対象外であれば比率はやや下がり、労災保険料率が高い業種では上昇する点に留意してください。

業種別・企業規模別の相場比較

同じ法定福利費でも、業種や企業規模によって負担率は顕著に変わります。以下に主要業種と従業員規模別の目安を示します。

業種別の目安

業種平均負担率増減要因
製造業14.5%労災保険料率が産業平均前後
建設業17.3%労災保険料率が高い
情報通信業13.8%高所得者比率が高く等級上限に到達しやすい
医療・福祉16.1%40歳以上比率が高く介護保険料が増大

企業規模別の目安

  • 従業員30人未満:13~15%
    小規模事業者は平均給与が低めで標準報酬月額が下がる傾向
  • 従業員30~99人:14~16%
    平均水準。労災保険率に大きな差が出始める
  • 従業員100人以上:15~17%
    平均給与・賞与が上がり厚生年金・健康保険の等級が高くなる

さらに、年度ごとの料率改定によって1ポイント前後の変動が発生することも珍しくありません。そのため、毎年春の保険料率改定時に自社の法定福利費率を再計算し、予算策定や採用計画に反映させることが重要です。

総括すると、一般的な企業であれば給与総額の14~17%が現在の実務的な幅となり、15%を基準に上下1~2ポイントを許容範囲として見積もるのが実務上妥当です。

法定福利費の計算方法

法定福利費は、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険における事業主負担分を合算して算出します。負担割合は各保険ごとに法律で定められており、従業員の標準報酬月額(または賞与額)に保険料率を掛けて求めます。

基本計算式:法定福利費率×標準報酬月額

企業が負担すべき法定福利費は、以下の手順で求めるのが一般的です。

① 従業員の標準報酬月額を確認
② 各保険の事業主負担率を適用
③ 毎月の負担額を算出し、年間では賞与分を加算

標準報酬月額とは

標準報酬月額は、4月〜6月に支払われた給与(残業手当・通勤手当等を含む)の平均を区分ごとに丸めた金額です。協会けんぽでは1等級(5万8千円)〜32等級(139万円)まで設定されています。

年間概算方法

月額負担額 × 12カ月 + 賞与支給額 × 事業主負担率(各保険)で年間の法定福利費を計上します。会計上は「法定福利費」勘定科目にて費用処理するのが一般的です。

計算例:年収300万円の場合

前提条件

・月収:20万円(標準報酬月額20万円と仮定)
・賞与:年2回 計60万円
・一般事業(建設業以外)
・2024年度協会けんぽ東京都の保険料率を採用

月額換算と保険料率(事業主分)

健康保険 :10.00% ÷ 2 = 5.00%
厚生年金 :18.30% ÷ 2 = 9.15%
介護保険 :1.82% ÷ 2 = 0.91%(40〜64歳のみ)
雇用保険 :0.95%
労災保険 :0.30%(平均的な第三種)

企業負担額の算出結果

月額負担=20万円 × (5.00%+9.15%+0.95%+0.30%) = 20万円 × 15.40% = 30,800円
年間負担=30,800円 × 12カ月 = 369,600円
賞与負担=60万円 × 15.40% = 92,400円
年間法定福利費合計=462,000円

計算例:年収500万円の場合

前提条件

・月収:30万円(標準報酬月額30万円と仮定)
・賞与:年2回 計140万円
・その他の前提は300万円ケースと同じ

月額換算と保険料率(事業主分)

健康保険 :5.00%
厚生年金 :9.15%
雇用保険 :0.95%
労災保険 :0.30%

企業負担額の算出結果

月額負担=30万円 × 15.40% = 46,200円
年間負担=46,200円 × 12カ月 = 554,400円
賞与負担=140万円 × 15.40% = 215,600円
年間法定福利費合計=770,000円

このように、法定福利費は給与水準と保険料率の変動で大きく変わります。年度更新や料率改定のたびに自社シミュレーションを行い、正確なコストを把握しましょう。

法定福利費の企業負担額を抑えるポイント

助成金・補助金の活用方法

国や自治体が用意する助成金・補助金を積極的に活用すれば、社会保険料や労働保険料の実質的な負担を抑えつつ従業員の処遇改善を図れます。厚生労働省・経済産業省・中小企業庁などが公募する制度には、要件を満たすことで返済不要の支援金を受け取れるものが多く、キャッシュフローの改善にも直結します。

代表的な助成金制度

・雇用調整助成金:景気変動や感染症等の影響で休業を余儀なくされた場合、休業手当に係る費用の一部を助成。
・キャリアアップ助成金:有期雇用労働者を正社員化した企業に対し、一人当たり最大57万円(要件によって変動)を支給。
・人材開発支援助成金:社員の職業能力向上を目的としたOFF-JTやOJTの訓練費用を補填。

申請プロセスを円滑に進めるコツ

①最新の公募要領を必ず確認し、対象となる経費・期間・事業計画の整合性をチェック。
②就業規則、賃金台帳、出勤簿などの労務関連書類をデジタル化し、申請時のエビデンス不足を防止。
③社会保険労務士や中小企業診断士といった専門家と連携し、書類作成・提出の手間を削減。

給与制度の見直しで負担軽減

賃金構成を工夫することで、「標準報酬月額」に影響しない非課税手当や成果連動型報酬を活用し、法定福利費の算定基礎を適正化できます。ただし、名ばかりの手当で賃金を切り下げると労基法違反となるため、適法かつ従業員満足度を高める設計が不可欠です。

賞与と手当のバランス調整

・賞与は毎月の給与と比べて健康保険料・厚生年金保険料の率が同一でも、年3回以上支給すると「給与」とみなされる可能性があるため、年2回までを基本に計画すると負担を予測しやすい。
・通勤手当・出張旅費・在宅勤務手当など、非課税枠を活用して手取りを維持しつつ企業負担を最適化。

選択型福利厚生の導入

・カフェテリアプランや確定拠出年金(DC)を導入すると、従業員はポイント制で必要なサービスを選択でき、会社は課税所得抑制による節税効果を得られる。
・テレワーク手当やDX研修費を含めれば働き方改革と生産性向上を同時に実現。

社会保険の適正化と支払いスケジュール調整

「標準報酬月額の正確な把握」と「納付スケジュールの最適化」を両輪で進めることで、過大な保険料負担と資金繰りリスクを回避できます。特に役員報酬の改定時期や臨時報酬の支給タイミングは慎重に設定しましょう。

標準報酬月額の正確な把握

・毎年4〜6月の定時決定(月額算定)では、残業やインセンティブが集中しないよう業務量を平準化して平均給与を一定に保つ。
・昇給・降給が著しい社員は随時改定(従前比±2等級かつ1等級当たり2万円以上)対象となるため、給与テーブルの改定幅を計画的に設定。

納付時期とキャッシュフロー管理

・社会保険料の納付期限(翌月末日)と賞与支払月をずらし、資金流出が集中しないよう調整。
・金融機関の口座振替日(毎月末)を活用し、資金残高を月末まで最大化することで短期運転資金を減らす。

まとめ

法定福利費は、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・介護保険(40歳以上)の5制度の保険料率を合算した企業負担分です。2023年度の東京都協会けんぽを例にすると、健康保険料率10.00%のうち企業負担5.00%、厚生年金18.30%のうち9.15%、雇用保険0.85%、平均的な労災保険0.35%、介護保険0.90%(該当者のみ)が加わり、おおむね給与総額の14〜15%が目安となります。標準報酬月額に各料率を掛ければ概算額が得られ、年収300万円なら約45万円、500万円なら約75万円が企業負担のイメージです。負担を抑えるには、人事制度の見直しや助成金の活用、届出・算定手続きの適正化が有効であり、最新料率を確認し計画的に資金繰りを行うことが重要です。

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