『月刊総務』が全国の人事総務の担当者を対象にアンケートを実施。福利厚生の実施内容のうち、食事補助に関する調査を実施し148社より回答を得ました。食事補助は、福利厚生の中でもっとも従業員からの満足度が高いといわれる分野です。結果の中で特に食事補助の実施有無・社員食堂や社食サービスの導入状況についてレポ―トします。
Contents
そもそも福利厚生とは
福利厚生には、「人間の暮らしを健康で豊かにすること。余裕のある落ち着いた生活ができるようにすること。」という意味があります。具体的には、会社が従業員やその家族に対して提供する「給与以外の報酬・サービス」を指します。福利厚生には、「法定福利」と「法定外福利」の2つがあり、「法定福利」がその名のとおり、社会保険など、法律で義務づけられているのに対して、「法定外福利」は、慶弔費や社員旅行、社員食堂など、企業が任意で実施するものです。
福利厚生の導入には、
- 企業のブランディング
- 優秀な人材の確保(リテンション)
- 従業員のモチベーションUP
といった効果が見込めることから、人材の定着を求める企業と、従業員のエンゲージメント強化のための施策と捉えられています。
食事に関する補助を行っている企業は約2割
様々な福利厚生が提供されている中、食事補助を行っている企業はどの程度あるのでしょうか? 食事は毎日摂るものであり、健康を支える重要な要素です。健康経営の重要性が高まるなか、従業員がいきいきと仕事に取り組むことで、生産性が向上するだけでなく、病気になった際、企業が負担する医療費が減少することで利益率が高くなる好循環が生まれると取り組みを強化する企業が増えています。
食事補助のパターン
食事補助の提供にはいくつかパターンがあります。一般的な4つをご紹介します。
①社員食堂で食事を提供する
②お弁当を現物支給する
③食事に使えるチケットを提供する
④現金を支給する
公平性 | メリット | デメリット | |
社員食堂で食事を提供 | △ | ・栄養管理が可能 ・安価で提供できる | ・設置スペースが必要 ・維持管理費がかかる |
お弁当の現物支給 | △ | ・導入が容易 ・福利厚生プランがある | ・マンネリ化しやすい ・発注業務が必要 |
食事チケットの提供 | ◎ | ・食事の選択肢が多い ・利用実績が把握できる ・福利厚生費の条件を 満たせば非課税 | ・「食事の提供」と同じ条件 が適用される |
現金支給 | 〇 | ・従業員満足度が高い | ・全額が所得(給与)とみなされ 所得税がかかる |
社員食堂の現状と利用傾向の分析
近年、企業における福利厚生の一環として、社員食堂の重要性が高まっています。社員食堂は、従業員に健康的かつ手軽な食事を提供することで、労働生産性の向上や社員の満足度を高める役割を果たしています。しかし、その導入状況や利用傾向には、企業規模や業種による違いが見られます。ここでは、現代の日本企業における社員食堂の普及状況と、従業員による利用実態について、最新のデータと分析をもとに掘り下げてみます。
社員食堂の利用率の現状と背景
社員食堂は、職場での食事の提供を目的とした施設で、多くの企業にとって重要な福利厚生の一環となっています。2018年のアンケート調査によると、日本の企業の約24%が社員食堂を導入していることが分かります。社員食堂の導入は、大企業に多く見られ、中小企業ではコストの面で二の足を踏む傾向があります。しかし、アウトソーシングを活用した社員食堂の普及により、今後導入率はさらに増加する可能性があります。
社員食堂がある企業の中で、実際にこれを利用して昼食を摂る人の割合は約54%です。週5日利用する人は全体の27%で、平均利用頻度は週に約2.1日となっています。男性が多く社員食堂を利用する一方で、女性は自家製弁当を好む傾向があり、食費を節約するために食堂を利用しない人も少なくありません。
社員食堂と他の食事補助オプションの比較
社員食堂以外にも多様な食事補助オプションがあります。例えば「チケットレストラン」は、全国7万店舗の飲食店やコンビニで利用でき、利用率99%、継続率98%、社員満足度90%を誇ります。「どこでも社食」は提携レストランでの利用が可能で、スマホ決済により経費精算の手間が省けます。「びずめし」では、食事補助の金額を自由に設定でき、加盟店が全国にあります。
設置型のサービスとして「オフィスおかん」は栄養バランスの良いおかずを提供し、自宅に届けるサービスもあります。また「オフィスでごはん」は無添加・国産素材の惣菜を毎月提供し、冷蔵庫と電子レンジの無料貸し出しがあります。「Fit Food Biz Lite」は食品添加物や化学調味料に頼らない健康的なお弁当を提供します。
他にも「オフィスプレミアムフローズン」は初期費用なしで導入しやすく、品質検査も万全です。さらに「ESKITCHEN」は幅広いメニューを提供し、導入企業は電子レンジのみ用意すればよいという利便性があります。「オフィスでやさい」は健康的な食事の提供を目指し、サラダやフルーツを中心としたメニューを提供します。
これらのサービスを利用することで、企業は社員の食生活を豊かにし、健康管理や社員満足度の向上に貢献することができます。社員食堂の直接的な導入が難しい企業でも、これらのオプションを活用することで、福利厚生の一環として食事補助を提供することが可能です。
導入している制度は、1位「社員食堂」2位「配達弁当」3位「現金支給」
アンケート結果によると、導入している制度については、「社員食堂」が55.9%と半数を超えています。続いて、「配達弁当」が44.1%、「現金支給」が20.6%、「置き食(惣菜・野菜など)」が17.6%という結果となっています。食事補助といえば、社員食堂というイメージが根強いことが伺えます。
食事補助予算は、月3,500円以下が約6割
いくら食事補助に予算を使っているかを聞いたところ、非課税範囲内である、月額ひとり3,500円以下が過半数を占めました。
食事補助が福利厚生費として認められるための条件
福利厚生にまつわる費用は、経費として会計処理を行いますが、企業が従業員に対して食事補助を「福利厚生費」として実施するためには、条件があります。
・役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
・金額が1か月当たり3,500円(消費税及び地方消費税の額を除きます。)以下であること
この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。
出典:国税庁HP
食事補助導入の際に気を付けるポイント
福利厚生として食事補助を導入する際に、忘れてはならないポイントとはなんでしょうか。
- 従業員が求めている内容かどうか
- すべての従業員にとって平等に利用機会が提供されているか
- 経営層の理解を得る
規模の大きな企業であれば、勤務地や職種が様々あります。従業員の年齢やライフステージによっても状況は異なります。従業員満足度をUPできる内容かどうか。また一部の社員だけに利用が偏ったりすることがないよう、職場のニーズにマッチした食事補助を検討しましょう。また、予算が必要になるため、経営層に目的と理解を取り付けることも重要です。
食事補助を導入するには
4つのパターンをご紹介しましたが、置き食ひとつとっても、惣菜やコンビニをオフィス内に設置するものや、最近では、テレワーク中の社員に食事を宅配するものなど、多くのサービスが提供されています。
社食サービスを選定する際の手順と、国内で導入が可能な社食サービスをご紹介していますのでぜひチェックしてみてください。
飲食店を社食として利用することができるサービス「びずめし」
オフィスワークしている社員も、テレワーク中の社員や出張中の社員でも利用できる、福利厚生にまつわる公平性を担保できる食事補助サービスが「びずめし」です。街中にある飲食店15,000店舗が社食として利用できます。ランチだけでなく、社員が好きなタイミングで利用ができるので、社食に代わる食事補助として、チームランチなど社内コミュニケーションの施策として、社長賞や社内イベントでの褒賞チケットして、幅広く利用いただけます。さらに飲食店を利用することで地域支援につながるサステナブルな仕組みです。
今回、調査に協力いただいた企業148社のうち、15.5%が「びずめし」を利用してみたい、と回答しています。食事補助を検討している企業さま、今ある制度の見直しを検討している企業さま、ぜひご検討ください。
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将来の福利厚生トレンドとしての食事補助
福利厚生の形態は、時代の変遷とともに進化し続けています。特に、食事補助制度は働き方の多様化に伴い、新たな展開を見せています。現代において、従業員に提供される食事補助は、単に「食」を提供するだけでなく、従業員の健康や満足度を高める重要な手段となっています。
リモートワーク時代の食事補助の形態の変化
リモートワークの普及は、福利厚生においても新たな変革をもたらしています。在宅勤務が定着するにつれて、従業員が求める福利厚生にも変化が見られます。東京都の調査によると、在宅勤務を実施している従業員の割合は42.9%に上り、この中で約46.9%の従業員が食事補助を求めています。
テレワーク環境下での食事補助は、オフィス以外の場所で働く従業員にも提供可能です。例えば、「チケットレストラン」のようなICカード型食事券を利用することで、従業員は全国のコンビニや定食屋、ファミリーレストランで食事を楽しむことができます。このようなサービスは、リモートワークをしている従業員にも健康管理や栄養バランスを意識した食事の取得を支援し、家事の負担を軽減できる重要な役割を担います。
持続可能な社員食堂の運営戦略
持続可能な社員食堂の運営には、様々な戦略が必要です。まず、設備投資が必要であるため、中小規模の企業では導入が難しい場合があります。しかし、より手軽な食事補助サービスの利用を考慮することで、効率的かつ経済的に福利厚生を提供できます。
設置型の食事補助サービスでは、オフィス内に冷蔵庫や電子レンジを設置し、社員が自由に食事を取ることができます。このようなサービスは、社員のコミュニケーションを促進し、さまざまなメニューを提供することで食事選択の多様性を保証します。ただし、適切なスペースが必要であるため、オフィスの条件によっては導入が難しい場合もあります。
提供型の食事補助では、決まった時間に温かい食事やお弁当が届けられるため、オフィス内で勤務している多くの社員が利用できます。キッチンや食堂がなくても温かい食事を提供できるため、オフィス環境を問わず導入が可能です。
また、デリバリー型のサービスでは、注文したお弁当やおかずを休憩時間に合わせて届けることができます。しかし、このサービスは立地によって充実度が異なるため、オフィスの位置によって導入のしやすさが変わります。
これらの戦略を組み合わせることで、多様な働き方に対応した持続可能な社員食堂の運営が可能になります。従業員の健康や満足度を考慮しながら、時代の変化に合わせた食事補助の形態を提供することが、今後の福利厚生のトレンドとなるでしょう。
まとめ
食事補助の導入状況について企業のアンケートをご紹介しました。新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークが促進されている状況が突然到来し、働き手も企業側も、コミュニケーションの取り方から模索している状況にあります。
不安を抱えやすい状況だからこそ、会社が健康を気遣ってくれている、というアピールを行うことがエンゲージメント強化に効果的なのではないでしょうか。
出典:『月刊総務』調べ
調査名称:食事補助に関する調査
調査対象:人事・総務系担当者600人
調査方法: Webアンケート
調査期間: 2021年4月6日〜4月13日
有効回答数:148件