「残業が減らない」「仕事が終わらない」と悩んでいませんか? 長時間労働は、従業員の健康を害するだけでなく、企業にとっても生産性低下や人材流出など、大きな損失につながります。本記事では、厚生労働省の調査データなどを交えながら、日本における長時間労働の現状や問題点、発生原因を企業側・従業員側の両面から解説します。
さらに、長時間労働を削減するために企業が取り組むべき効果的な対策を、労働時間管理、業務効率化、人材育成・採用、意識改革の4つの観点から具体的に紹介します。働き方改革関連法で注目される「ワークライフバランス」の実現や、企業イメージ向上、離職率低下といった効果にも繋がる、具体的な対策方法をまとめました。本記事を参考に、自社の課題や状況に合わせて、適切な対策を検討してみましょう。
Contents
長時間労働の現状
長時間労働の定義と日本の長時間労働の実態
労働基準法では、労働時間は1日8時間、週40時間までと定められています。これを超える労働時間については、労使間で「36協定」(時間外労働に関する協定)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要となります。しかし、日本は世界的に見ても長時間労働の多い国として知られています。OECDの調査によると、2021年の日本の年間労働時間は1,771時間で、OECD加盟国平均の1,716時間を上回っています(OECD「Hours worked」)。
長時間労働がもたらす問題点
長時間労働は、従業員個人だけでなく、企業、そして社会全体に様々な悪影響を及ぼします。
従業員への影響
- 健康問題 長時間労働は、過労死や脳・心臓疾患、精神疾患、睡眠障害、自律神経失調症など、様々な健康問題のリスクを高めます。また、疲労の蓄積により、集中力や注意力が低下し、業務効率の低下やミス増加にもつながります。
- プライベートの圧迫 長時間労働は、家族や友人と過ごす時間や趣味に使う時間を奪い、ワークライフバランスを崩す原因となります。その結果、生活の質が低下し、モチベーションや幸福度の低下にもつながる可能性があります。
企業への影響
- 生産性低下 長時間労働は、従業員の疲労蓄積やモチベーション低下により、生産性の低下を招きます。また、集中力や注意力の低下によるミス増加も、企業の損失につながる可能性があります。
- 人材の流出 長時間労働が常態化している企業は、従業員にとって魅力的な職場とは言えません。そのため、優秀な人材の確保が難しくなったり、離職率が高くなるなどの問題が生じます。また、企業イメージの低下により、採用活動にも悪影響が及ぶ可能性があります。
- コンプライアンスリスク 長時間労働を放置することは、労働基準法違反に問われる可能性があります。また、過労死や過労自殺などの重大な問題が発生した場合、企業は社会的責任を問われ、企業イメージの失墜や損害賠償などのリスクを負うことになります。
社会への影響
- 少子化の加速 長時間労働は、結婚や出産を諦める若年層を増やし、少子化を加速させる要因の一つとなっています。また、子育てや介護との両立が困難になるため、労働人口の減少にもつながる可能性があります。
- 経済活性化の阻害 長時間労働は、従業員の消費意欲や時間的制約により、個人消費の低迷につながる可能性があります。また、企業の生産性低下やイノベーションの阻害要因となり、経済全体の活性化を阻害する可能性も懸念されます。
このように、長時間労働は様々な問題を引き起こす可能性があります。企業は、長時間労働の現状を把握し、その原因を分析した上で、適切な対策を講じる必要があります。
長時間労働が発生する原因
長時間労働は、企業側と従業員側の両方に要因があると考えられます。ここでは、それぞれの要因について詳しく解説していきます。
企業側の要因
企業側の要因としては、以下のようなものが挙げられます。
業務量の過剰さ
企業の成長や事業拡大に伴い、従業員一人当たりの業務量が増加することがあります。特に、新しいプロジェクトや顧客対応など、突発的な業務が発生した場合、従業員は既存の業務と並行して対応しなければならず、長時間労働に繋がってしまうケースも少なくありません。また、人員削減や採用抑制などにより、慢性的な人手不足に陥っている企業では、従業員一人当たりの業務負担が大きくなり、長時間労働が常態化してしまうことがあります。
非効率な業務プロセス
業務プロセスが複雑化・煩雑化していると、業務に時間がかかり、非効率な働き方につながる可能性があります。例えば、以下のような状況が考えられます。
- 業務の進め方が標準化されておらず、担当者によって手順や方法が異なる
- 複数の部署が関与する業務で、連携がうまくいっていないため、手戻りや待ち時間が発生している
- 紙媒体でのやり取りが多く、デジタル化が進んでいないため、書類作成や情報共有に時間がかかっている
このような非効率な業務プロセスは、従業員の負担を増やし、長時間労働の一因となります。業務プロセスを見直し、標準化・簡素化・デジタル化を進めることで、業務効率を向上させ、長時間労働の削減につなげることが重要です。
人材不足
人材不足は、長時間労働の大きな要因の一つです。人材不足が深刻化すると、限られた人員で多くの業務をこなさなければならず、従業員一人ひとりの負担が増加します。その結果、長時間労働や休日出勤を余儀なくされるケースも少なくありません。特に、専門性の高い職種や、人手不足が深刻な業界においては、人材不足が長時間労働の大きな要因となっています。
厚生労働省の調査によると、企業が人材を確保できない理由として、「応募者が少ない」が最も多く、次いで「必要な経験・技能を持つ者が少ない」という結果が出ています。これは、企業が求める人材と、労働市場に存在する人材との間にミスマッチが生じていることを示唆しています。人材不足を解消するためには、企業は、待遇改善や労働環境の整備など、人材確保に向けた取り組みを進める必要があります。
成果主義によるプレッシャー
成果主義とは、従業員の成果や能力に応じて評価や報酬を決定する人事評価制度のことです。成果主義の導入により、従業員は自身の成果を向上させるために、より一層努力するようになると期待されます。しかし、一方で、成果主義は、従業員に過度なプレッシャーを与える可能性も孕んでいます。成果を上げなければ評価や報酬に繋がらないという状況下では、従業員は長時間労働や休日出勤を強いられる可能性があります。また、成果を上げるために、無理な目標設定やノルマが課されることもあり、従業員の心身に悪影響を及ぼす可能性も懸念されます。成果主義を導入する際には、従業員の労働時間や心身の健康に配慮し、適切な目標設定や評価を行うことが重要です。
長時間労働を是とする企業文化
長時間労働を是とする企業文化は、従業員の意識や行動に大きな影響を与えます。このような企業文化では、長時間労働が当たり前とされ、短い時間で効率的に働く従業員よりも、長時間労働をいとわず、会社に尽くす従業員の方が高く評価される傾向があります。その結果、従業員は、長時間労働を強いられることを当然と感じるようになり、自ら進んで長時間労働を選択するようになる可能性があります。長時間労働を是とする企業文化を改善するためには、経営層が率先して働き方改革に取り組み、労働時間に対する意識を変えていく必要があります。また、業務効率化や生産性向上に向けた取り組みを進め、長時間労働を削減できるような環境を整備していくことが重要です。
従業員側の要因
従業員側の要因としては、以下のようなものが挙げられます。
真面目さや責任感の強さ
真面目さや責任感が強い従業員は、業務を最後までやり遂げようとするあまり、長時間労働に陥りやすい傾向があります。特に、日本人は、責任感が強く、周囲に迷惑をかけたくないという意識が強いと言われています。そのため、業務量が多くても、断ることができずに抱え込んでしまい、長時間労働に繋がってしまうケースも少なくありません。真面目さや責任感は、企業にとって重要な要素の一つですが、それが長時間労働に繋がってしまうことは、企業にとっても従業員にとっても大きな損失となります。真面目さや責任感を活かしながら、効率的に業務をこなし、ワークライフバランスを実現するためには、従業員一人ひとりが、業務の優先順位をつけ、適切な時間配分を意識することが重要です。
周囲への配慮
周囲への配慮から、長時間労働をしてしまうケースもあります。例えば、「自分が早く帰ると、他の人の負担が増えてしまうのではないか」「上司が残業しているのに、自分だけ先に帰るわけにはいかない」といった思いから、長時間労働を選択してしまうことがあります。特に、日本人は、同調圧力が強いと言われ、「空気を読む」ことが求められる場面が多くあります。そのため、周囲の状況に合わせて、自分の行動を決めなければならない場面も多く、それが長時間労働に繋がってしまうケースも少なくありません。周囲への配慮は、円滑な人間関係を築く上で重要な要素の一つですが、それが長時間労働に繋がってしまうことは、企業にとっても従業員にとっても大きな損失となります。周囲への配慮を活かしながら、効率的に業務をこなし、ワークライフバランスを実現するためには、従業員一人ひとりが、自分の業務に責任を持ち、適切な時間配分を意識することが重要です。
自己啓発意識の高さ
自己啓発意識が高い従業員は、自身のスキルアップやキャリアアップのために、業務時間外も勉強や自己研鑽に励むことがあります。しかし、それが長時間労働に繋がってしまうケースも少なくありません。自己啓発は、従業員の成長を促し、企業の競争力を高める上で重要な要素の一つですが、それが長時間労働に繋がってしまうことは、企業にとっても従業員にとっても大きな損失となります。自己啓発とワークライフバランスを両立するためには、従業員一人ひとりが、時間管理を徹底し、メリハリをつけて生活することが重要です。
ワークライフバランスの軽視
仕事に熱中するあまり、プライベートを犠牲にしてしまうことがあります。特に、若いうちは、体力があり、仕事に打ち込むことが楽しいと感じる人も多く、ワークライフバランスを軽視してしまう傾向があります。しかし、長時間労働が続くと、心身に疲労が蓄積し、健康を害してしまう可能性があります。また、プライベートが充実していないと、ストレスを発散することができず、心身に悪影響を及ぼす可能性もあります。ワークライフバランスを軽視することは、従業員の健康や生活の質を低下させるだけでなく、企業にとっても、従業員の生産性低下や離職率増加などのリスクがあります。ワークライフバランスを実現するためには、従業員一人ひとりが、仕事とプライベートの両方を充実させたいという意識を持ち、オンとオフを切り替えることが重要です。
働き方改革による変化
近年、日本企業では、長時間労働の是正や従業員のワークライフバランス向上を目的とした「働き方改革」が積極的に推進されています。ここでは、働き方改革によって企業にどのような変化がもたらされたのか、具体的な例を挙げながら解説していきます。
企業文化の見直しと意識改革
働き方改革によって、多くの企業で長時間労働を美徳とする企業文化が見直され、従業員の意識改革が進んでいます。従来は、長時間労働や休日出勤が当たり前とされてきた企業でも、ノー残業デーの設定や残業時間の上限設定など、労働時間削減に向けた取り組みが積極的に行われています。また、従業員に対しても、ワークライフバランスの重要性や効率的な働き方についての研修などが実施され、意識改革が促されています。
例えば、株式会社ワーク・ライフバランスが実施した「働き方改革に関する調査」によると、企業における働き方改革の目的として最も多かったのは、「従業員の健康増進」で82.2%、次いで「生産性の向上」が77.9%という結果が出ています。これは、多くの企業が、従業員の健康やワークライフバランスを重視した働き方改革を進めていることを示唆しています。
フレックスタイム制とリモートワークの導入
フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方を導入する企業も増えています。フレックスタイム制は、従業員が自分の都合に合わせて始業・終業時間を自由に設定できる制度です。子育てや介護など、家庭の事情に合わせて働きたい従業員にとって、フレックスタイム制は非常に有効な制度です。また、リモートワークは、自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で仕事をする働き方です。通勤時間の削減や集中しやすい環境で仕事ができるなどのメリットがあり、従業員の生産性向上やストレス軽減に繋がると期待されています。
株式会社リクルートが2023年3月に発表した「2023年版 働き方トレンド調査」によると、企業が導入している(または導入を検討している)制度として、「フレックスタイム制」が最も多く72.7%、次いで「リモートワーク」が69.1%という結果が出ています。これは、多くの企業が、従業員の柔軟な働き方を支援する制度を導入していることを示唆しています。
企業イメージへの影響と離職率の改善
働き方改革を進めることは、企業イメージの向上や優秀な人材の確保、離職率の改善にも繋がります。ワークライフバランスを重視する求職者は年々増加しており、待遇面だけでなく、働きやすさや企業文化を重視して企業を選ぶ傾向が強まっています。そのため、働き方改革を積極的に推進し、従業員が働きやすい環境を整備することで、企業イメージの向上に繋がり、優秀な人材を獲得しやすくなります。また、従業員の満足度が高まれば、離職率の低下にも繋がります。
株式会社マイナビが2023年3月に発表した「2024年卒 マイナビ大学生広報活動開始予定企業調査」によると、企業が就職活動中の学生に訴求するポイントとして、「働きがい・成長環境」が最も多く74.5%、次いで「ワークライフバランス」が64.9%という結果が出ています。これは、多くの企業が、働き方改革によって実現できる「働きがい」や「ワークライフバランス」を就職活動中の学生にアピールしていることを示唆しています。
企業が取るべき対策
長時間労働を是正し、従業員が健康で生産性を高く維持できる環境を作るためには、企業側の積極的な取り組みが不可欠です。ここでは、企業が取るべき対策を具体的な方法と合わせて詳しく解説します。
労働時間管理の徹底
労働時間の適切な管理は、長時間労働削減の第一歩です。現状を把握し、適切なシステムを導入することで、労働時間の削減だけでなく、業務効率の改善にもつながります。
労働時間記録システムの導入
従来のタイムカードや自己申告による労働時間管理では、正確な労働時間の把握が難しい場合や、サービス残業が発生する可能性もあります。そこで、客観的なデータに基づいた労働時間管理システムの導入が有効です。勤怠管理システムには、ICカードやスマートフォンを用いた打刻システム、PCの起動・終了時間やアプリケーションの使用状況を記録するシステムなど、様々な種類があります。自社のニーズや規模に合わせて最適なシステムを選ぶことが重要です。
企業の生産性低下とリスクの把握
長時間労働は、従業員の健康問題を引き起こすだけでなく、企業にとっても生産性の低下やリスク増加につながります。過労による集中力・注意力の低下は、業務効率の低下やミス増加の原因となります。また、健康問題による従業員の休職や離職は、企業にとって大きな損失です。さらに、長時間労働が常態化している企業は、従業員からの訴訟リスクや企業イメージの低下など、様々なリスクを抱えることになります。これらのリスクを正しく認識し、早急な対策を講じる必要があります。
残業時間の上限設定
労働基準法では、残業時間の上限が定められており、企業はこれを遵守する必要があります。違反した場合には、罰則が科せられる可能性もあるため注意が必要です。残業時間の上限を設定することで、従業員に時間内に業務を終わらせる意識を持たせることができます。また、上限を超える残業が発生する場合には、事前に申請を必要とするなど、管理体制を強化することで、長時間労働の抑制につなげることができます。残業時間の上限設定は、法律遵守だけでなく、企業のコンプライアンス意識向上にもつながります。
ノー残業デーの設定
週に一度、定時退社を促す「ノー残業デー」を設定することで、従業員にメリハリのある働き方を促し、業務効率の改善を図ることができます。ノー残業デーには、業務時間内に仕事を終えるために、従業員同士で協力し、業務の進捗状況を共有するなど、コミュニケーションを促進する効果も期待できます。また、ノー残業デーをきっかけに、業務プロセスを見直し、無駄な作業を削減するなど、業務改善の意識を高めることにもつながります。
業務効率化
長時間労働の根本的な解決には、業務量の削減と業務効率の向上が不可欠です。業務プロセスを見直し、無駄な作業を減らすとともに、ITツールを導入するなどして、従業員がより効率的に働ける環境を整える必要があります。
業務プロセスの見直し
現状の業務プロセスを可視化し、無駄な作業や非効率な部分を洗い出すことが重要です。業務フロー図などを用いて、各部署や担当者間の連携状況や情報共有の状況を明確にすることで、改善点が見えてきます。例えば、複数の担当者間で何度もやり取りされている書類がある場合、承認プロセスを見直すことで、業務の効率化を図ることができます。また、会議の目的や参加者を明確にすることで、会議時間の短縮や不要な会議の削減につなげることができます。業務プロセスの見直しは、従業員の負担を軽減するだけでなく、企業全体の生産性向上にもつながります。
ITツール導入による業務の自動化
RPA(Robotic Process Automation)などのITツールを導入することで、定型的な業務を自動化し、従業員をより創造的な業務に集中させることができます。例えば、データ入力、請求書処理、顧客対応など、これまで人手で行っていた作業を自動化することで、業務効率を大幅に向上させることができます。また、AI(人工知能)を搭載したチャットボットを導入することで、顧客からの問い合わせに自動対応し、従業員の負担を軽減することも可能です。ITツールの導入は、業務効率化だけでなく、人材不足の解消や従業員のスキルアップにもつながります。
テレワークやフレックスタイム制の導入
テレワークやフレックスタイム制を導入することで、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にし、ワークライフバランスの向上を促進することができます。テレワークは、通勤時間の削減や集中しやすい環境で業務を行うことができるため、生産性向上やストレス軽減効果も期待できます。フレックスタイム制は、コアタイムを設けつつ、始業・終業時間を自由に設定できるため、家族の介護や育児など、プライベートな時間の確保もしやすくなります。これらの制度を導入する際には、適切な労働時間管理やセキュリティ対策を講じる必要があることに留意が必要です。
人材育成・採用
人材不足は長時間労働の一因となります。従業員のスキルアップを支援することで、個々の業務効率を向上させるだけでなく、新たな人材の採用にも積極的に取り組むことで、企業全体の労働時間削減を目指します。
従業員のスキルアップ支援
従業員のスキルアップは、業務効率の向上に繋がり、ひいては長時間労働の削減に貢献します。企業は、従業員に対して、業務に必要な知識やスキルの習得を支援する体制を整える必要があります。具体的には、外部研修への参加費用補助、資格取得支援制度、社内勉強会の開催などが挙げられます。また、従業員一人ひとりのキャリアプランを策定し、それに基づいた研修計画を立てることも重要です。スキルアップを通じて従業員のモチベーションを高め、企業の成長に繋げることが重要です。
適切な人員配置
慢性的な人手不足は、長時間労働の大きな要因となります。業務量に対して適切な人数を配置することで、従業員一人ひとりの負担を軽減し、長時間労働の抑制に繋がります。人員配置計画を策定する際には、将来的な事業計画や従業員の退職率などを考慮する必要があります。また、各部署やチームの業務量を可視化し、偏りが生じている場合は、人員の配置転換や業務分担の見直しを行うなど、柔軟に対応することが求められます。適切な人員配置は、従業員のモチベーション向上や定着率向上にも繋がるため、企業にとって重要な課題です。
多様な働き方に対応できる人材の採用
テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方が求められる時代においては、時間や場所に捉われずに成果を創出できる人材の採用が重要です。採用活動においては、従来のスキルや経験だけでなく、柔軟性、自律性、コミュニケーション能力など、新しい働き方に必要な能力を重視する必要があります。また、多様な働き方に対する企業の姿勢を明確に示すことで、企業理念に共感し、主体的に活躍できる人材の獲得に繋がります。多様な働き方を許容する企業文化を築くことで、優秀な人材を獲得し、競争力を強化していくことが重要です。
意識改革
長時間労働の是正には、単に制度やシステムを導入するだけでは不十分です。従業員一人ひとりが、ワークライフバランスの重要性を認識し、効率的な働き方を実践していくための意識改革が必要です。企業は、従業員に対して、ワークライフバランスの重要性や効率的な働き方について、積極的に啓蒙していく必要があります。
ワークライフバランスの重要性の啓蒙
ワークライフバランスとは、仕事とプライベートの調和を図り、充実した生活を送ることです。長時間労働は、従業員の健康を害するだけでなく、家族や友人との時間、趣味や自己啓発の時間など、プライベートな時間を犠牲にすることになります。ワークライフバランスが崩れると、ストレスや疲労が蓄積し、集中力やモチベーションの低下に繋がります。企業は、従業員に対して、ワークライフバランスの重要性を理解させ、仕事以外の時間を充実させるように促す必要があります。例えば、社内イベントでワークライフバランスに関する講演会を開催したり、社内報で従業員のワークライフバランスの実践例を紹介したりするなどの取り組みが考えられます。
成果に応じた評価制度の導入
従来の日本の企業では、労働時間の長さが評価に繋がる傾向にありました。しかし、長時間労働を削減し、効率的に成果を上げるためには、労働時間ではなく、成果に基づいて従業員を評価する制度を導入する必要があります。成果に応じた評価制度を導入することで、従業員は、短時間で効率的に成果を上げるために、業務の優先順位を付けたり、無駄な作業を省いたりするなど、工夫するようになります。また、成果を明確に示すことで、従業員のモチベーション向上にも繋がります。成果に応じた評価制度を導入する際には、評価基準を明確化し、従業員に周知徹底することが重要です。
長時間労働を美徳とする企業文化の改善
長時間労働を美徳とする企業文化を改善することは、長時間労働の削減に不可欠です。企業は、従業員に対して、長時間労働はむしろ生産性を低下させること、ワークライフバランスを重視することの重要性を理解させる必要があります。また、経営層自らが率先して、定時に退社したり、有給休暇を取得したりするなど、ワークライフバランスを重視する姿勢を示すことが重要です。長時間労働を是正するためには、企業全体で意識改革を進めていく必要があります。
まとめ
長時間労働は、従業員の健康や生活の質を低下させるだけでなく、企業にとっても生産性や企業イメージの低下、人材の流失といったリスクをもたらします。長時間労働を減らすためには、労働時間管理の徹底、業務効率化、人材育成・採用、意識改革など、企業全体で取り組む必要があります。 例えば、サイボウズ株式会社のように労働時間管理システムを導入し、残業時間や業務内容を可視化することで、問題点の把握や改善策の実施を効果的に行うことができます。 また、株式会社ワーク・ライフバランスが提唱するような、仕事と生活の調和を重視した働き方改革を推進することで、従業員の満足度を高め、企業の成長につなげることが可能となるでしょう。