福利厚生の一環としての社員食堂。ただ食事を提供する場所としてではなく、社員の満足度やモチベーション向上の手段として、その重要性が増しています。しかし、効果的な社員食堂を運営するには、専門的な知識やリソースが必要とされることも。
そこで、多くの企業が社員食堂の委託運営を選択しています。この記事では、社員食堂の委託運営がもたらすメリットや、成功のためのポイントを詳しく解説します。社員の福利厚生を真剣に考える経営者や人事担当者、または社員食堂の運営に悩む方々にとって、新しい視点や秘訣を一緒に探っていきましょう。
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社員食堂の運用方法には3種類ある
社員食堂の運用方法には大きく分けて「外部委託型」と「準直営型」と「自社運営型」の3つが存在します。
【外部委託型】 これは、食事提供を専門の業者に委託する方法です。専門業者がメニュー開発から衛生管理までを行い、企業側は人手やスキルを要せずに食堂運営が可能です。
【準直営型】これは、外部委託と直営運営の中間に位置します。一部または全ての業務を外部の専門業者に委託する一方で、運営全般のコントロールや基本方針の決定ならびに費用負担は自社が行うという運営形態を指します。
【自社運営型】 自社運営型は文字通り社員食堂の全てを自社で運営する方法です。こちらは、自社で運営するため社員の要望に柔軟に応えることができる一方、人手や経営スキルが必要となります。
外部委託(受託運営)のメリット・デメリット
社員食堂を外部委託(受託運営)する際のメリットとしては、専門の業者によるプロフェッショナルな運営となるため、メニューのバラエティや食材の鮮度、衛生管理等の面で高い品質を保つことが可能です。さらに、受託運営により、オープンな競争の中で最適な業者を選ぶことができ、より多様なサービスや料理の提供が期待できます。また、社内の従業員の負担を軽減し、専門的な業務に集中できるため、業務効率の向上も見込めます。さらに、自社で運営する場合に比べて、労働力や設備の管理にかかるコストを抑制することができます。これにより、企業の経済的な負担を軽減し、経営の安定化にも寄与することができます。
一方でデメリットとしては、業者によってはコストが高額になる場合もありますが、適切な契約交渉や見積もりの比較を行うことで、費用を最適化することができます。また、自社のニーズに応じた柔軟な運営が難しいという点が挙げられますが、契約書やSLA(サービスレベル契約)を通じて、明確な要件やサービスレベルを定めることで、自社の要求に合った運営を実現することができます。さらに、受託業者との定期的なコミュニケーションやミーティングを通じて、運営の改善や課題の解決を行うことも重要です。これにより、より良いサービスの提供や運営の最適化が可能となります。
準直営型のメリット・デメリット
準直営型の社員食堂運営は、外部の専門業者と協力しながら一部自社でも運営を行う方法です。
メリットとしては、自社の要望や社員の声を直接反映しやすい点が挙げられます。また、業者のノウハウを活用しながら、自社独自のメニューやサービスを提供できるため、自社色を出すことも可能です。さらに、社員食堂の運営において、準直営型は経済的な利点もあります。自社で一部の運営を行うことで、外部業者に比べてコストを抑えることができるのです。
一方で、自社で運営する部分があるため、その手間は省けません。食堂の運営には人員や設備、管理など様々な面での責任が伴います。また、外部業者との調整も必要となります。社員食堂の準直営型は、自社が運営に関する責任を持つため、運営にかかる負担も増える可能性があります。これらがデメリットとなります。
準直営型の社員食堂運営には、メリットとデメリットがありますが、自社の要望を反映し、独自のメニューやサービスを提供することができる一方で、運営にかかる手間や負担も増えることを考慮する必要があります。
自社・直営(運営)のメリット・デメリット
自社で社員食堂を運営する場合、その最大のメリットは「メニューの自由度」でしょう。自社運営ならではの、社員の健康や好みに合わせたメニュー提供が可能です。また、直接的なフィードバックにより、サービス改善を臨機応変に行える点も見逃せません。
また、企業のイメージアップやブランディングに寄与するメリットも見逃せません。社員食堂での料理は、自社製品の素材を活用したり、地元の特産品を使ったメニューを提供するなど、企業の特性や地域性を反映することが可能です。これにより、社員の誇りや一体感を高め、また企業の風土や理念を表現する一環として活用できます。
一方で、そのデメリットとしては運営負担とコストが挙げられます。専門的な知識と経験を持ったスタッフの採用や維持、食材調達といった管理業務が必要となります。
費用面では、以下のような項目が考慮されることが一般的です。
- スタッフの人件費
- 食材・調理道具等の購入費
- メンテナンス費
- その他、運営に伴う各種費用
またルール設定や衛生管理など、飲食業特有の規制への対応が必要となります。これには専門的な知識や経験が求められるため、それらを持ったスタッフの採用か、既存のスタッフへの研修が必要となります。また、食材の品質管理や廃棄処理といった、食事提供に伴う細かな業務も増えるため、運営負担はそれなりに大きいと言えます。
外部委託(受託運営)が増えている?導入背景について
自社運営の困難さ
一つは人材確保の困難さです。メニュー作成から衛生管理、栄養バランスの考慮まで一手に担う飲食業者の専門性が求められています。これらを自社で行うには、専門知識を持った人材の確保が必要で、それに伴うコストも発生します。しかし、外部委託に移行することで、より多くの専門知識を持った人材を利用できるため、企業は競争力を向上させることができます。
二つ目は固定費用が大きい点です。飲食業者に委託することで固定費を変動費にすることが可能となり、経済的負担を軽減できます。また、委託先との契約により、コスト面での柔軟性も高まります。これにより、企業はより効率的に経営を行うことができるようになります。
三つ目は食材の調達と管理における問題です。大量の食材を購入し、その保存や在庫管理には高度な技術と経験が必要となります。これに失敗すると大量の廃棄が発生し、企業に大きな損失をもたらす可能性があります。しかし、外部委託することで飲食業者が食材の調達と管理を一手に引き受けてくれるため、企業は安心して社員食堂の運営に専念することができます。
四つ目はメニューの多様化と更新に関する難しさです。自社運営の場合、常に新鮮でバラエティ豊かなメニューを提供することが求められますが、それには料理のプロだけでなく、トレンドを把握するマーケティングの専門知識も必要となります。一方、外部委託することで、飲食業者が最新の飲食トレンドに基づいたバラエティ豊かなメニューを提供します。これにより、社員は毎日楽しみながら食事ができ、その結果、社員の満足度やモチベーションも向上するでしょう。
以上のような困難さを考えると、社員食堂の運営は外部委託が一般的になっている理由がわかります。外部委託により人材、コスト、食材管理、メニュー更新等の様々な課題を解決でき、企業は本業に集中することができます。これが、近年増えている外部委託型社員食堂の最大のメリットと言えます。
外部委託することによる社員の満足度向上
外部委託により、プロの調理人が作るバラエティ豊かなメニューを日替わりで提供できるようになります。これにより、社員は健康的で美味しい食事を手軽に取ることができ、その結果、満足度が高まっています。
また、社員食堂が外部委託されることで企業内のリソースを別の業務に集中させることが可能となり、全体の効率化にも寄与しています。これは間接的に社員の満足度にも影響しています。
さらに、社員食堂の運営をプロに委託することで、食材選びから調理方法、栄養バランスまで、全てにおいて専門的な知見を活かすことが可能になります。これは、社員の健康管理やダイエットを手助けし、結果的には心身の健康状態を向上させることも期待できます。
また、外部委託による運営は、特定のアレルギーなどを持つ社員や、宗教上の食事制限がある社員に対しても、適切なメニュー提供が可能となり、社員全体の満足度向上につながります。
外部委託の業者選びでは、料理の質やサービスの質だけでなく、衛生管理体制や食材の調達方法なども重要なポイントです。安全で健康的な食事を提供することで、社員の満足度だけでなく、企業のブランドイメージ向上にも貢献します。
以上のように、社員食堂の外部委託は、単に食事提供の手間を省くだけでなく、多面的な利点を持つことから、多くの企業がこの方式を選択しています。
委託する際の注意点
社員食堂を委託する際には、以下の要点を考慮して選びます。
【表1:社員食堂の委託選定基準】
選定基準 | 内容 |
---|---|
料理の質 | 提供する料理の美味しさ、メニューのバリエーション、栄養バランス等。 |
運営スキル | 経営力、人事制度、サービスの質など。 |
衛生管理 | 厨房の清潔さ、食材の管理方法、衛生教育の有無等。 |
コストパフォーマンス | 料金とサービスのバランス、利用者負担の軽減策等。 |
料理の質は直接的に社員の満足度に影響します。
また、運営スキルや衛生管理も、社員の健康や安心感に大きく関わります。コストパフォーマンスについては、料金とサービスのバランスを見極めることが重要です。
その一方で、外部委託することによる社員の満足度向上の具体的な例も見てみましょう。
外部委託により、メニューの種類や料理のクオリティが増加することから、社員の満足度は格段に向上します。多彩な料理が提供されることで、社員の食事に対する期待感が高まり、職場環境全体のモチベーション向上につながると言われています。
また、プロフェッショナルな飲食業者による衛生管理も、社員の安心感を高めます。中でも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で、衛生管理の重要性が再認識された現在、外部委託による専門的な衛生管理は大きなメリットとなるでしょう。
さらに、運営スキルの観点からも、外部委託は社員の満足度を向上させる要因です。プロフェッショナルな業者は、社員のニーズを満たすメニュー提案や、フードロス削減への取り組みなど、総合的な運営スキルを発揮します。これにより、社員の満足度向上だけでなく、企業のコスト効率も向上するという、両方向での利益を生むことが可能です。
しかし、外部委託を選ぶ際は、コストパフォーマンスも重要な判断基準となります。料金とサービスのバランスを見極めることで、社員にとって手頃な価格で高品質なサービスを提供することができるでしょう。
外部委託のメリットを最大限に活かすためには、上述した選定基準を基に委託先を選び、具体的な契約内容の詳細までしっかりと確認することが重要です。社員食堂の運営方法を選ぶ際は、社員の満足度向上を最優先に考えた選択を心がけましょう。
社食サービスの利用
コスト低減を目指す企業の中で、社員食堂の外部委託が一般的となっていますが、その流れとは裏腹に、よりコスト低減を目指し、社食サービスの導入が注目されているのも事実です。このようなサービスは、手軽に社員満足度を向上させるための有効な手段として位置づけられ、導入する企業が日増しに増えています。
置き型社食サービスの導入
「置き型社食サービス」は、スペースの制約や初期投資を気にせず、冷蔵庫や棚に食事を保管することで運用する手法です。独自の食堂スペースの不足や、賃料の高騰が問題となる都市部の中小企業にとっては、非常に効果的な解決策です。24時間、好きな時間にアクセスできるため、異なるシフトの社員も利用しやすいです。
デリバリー型お弁当サービスの導入
毎日、所定の時間帯にお弁当を提供するサービスは、社員の好みやニーズに合わせてメニューを選択することができます。一日のエネルギー摂取量やアレルギー情報、宗教的な制約を考慮したメニュー提供も可能です。さらに、多国籍料理の提供により、多様な文化背景を持つ社員のニーズにも応えることができます。このサービスは、特にオフィスのスペースが限られている企業や、新しいオフィスを設けることが困難な状況の企業に適しています。
食事補助・食事券サービスの導入
地域の飲食店やチェーン店で使用できる食事券の提供は、社員のランチタイムの利便性を向上させるだけでなく、地域経済の活性化にも貢献します。設備投資の必要がなく、維持費もかからないため、経営の負担も少なく、外部の飲食店との連携を深めることで、新たなビジネスのチャンスも生まれる可能性があります。
さらに、社員は好きなタイミングで好きな食事を楽しむことができるため、お昼休みが充実しモチベーションや満足度の向上に繋がります。このような取り組みは、従業員のリテンション率の向上や新しい人材の獲得にも寄与すると考えられます。
フードトラックの導入
フードトラックは、社内のエリアに移動して食事を提供することができるため、柔軟な運営が可能です。特に、社内イベントやアウトドアの場での食事提供に適しており、社員に新鮮で多様なメニューを楽しむ機会を提供します。フードトラックの導入により、社員の食事体験が豊かになり、企業のイメージ向上にも寄与することができます。
自動販売機の設置
自動販売機を導入することで、社内の利用者に24時間飲み物や軽食を提供することができます。自動販売機は手軽に利用できるため、急な飲み物のニーズや小腹が空いた時に便利です。また、設置や管理が比較的容易であり、運営コストも低く抑えることができます。
以上のように、社食サービスの利用方法は多岐にわたります。企業は自身のニーズや予算に応じて、最適なサービスを選択することが重要です。社員の満足度向上や効率的な経営を実現するために、適切な社食サービスの導入を検討しましょう。
社員食堂を委託できる会社3選
株式会社LEOC
株式会社LEOCは、病院や企業、学校など様々な施設でフードサービスを提供しており、特に社員食堂でのサービスが評価されています。高いレベルの「トップシェフ」によるレストラン品質の料理を提供し、健康経営優良法人に認定されるなど、社会的な貢献と従業員の福利厚生に注力しています。
北海道から沖縄まで全国2,800以上の場所で事業を展開し、各施設のニーズに合わせたカスタマイズされた食事を提供しています。健康とおいしさを追求し、厳格な安全・衛生管理と持続可能な取り組みを重視しています。
株式会社メフォス
株式会社メフォスは給食サービスを中心に、企業や学校、福祉施設に対して高品質な食事を提供している企業です。地域の新鮮な食材を使用し、地元ならではの味付けや郷土料理の提供を心がけており、利用者に豊かな食事体験を提供しています。
信越半導体株式会社白河工場の社員食堂運営を例に、メフォスがどのように健康づくりに貢献しているかを紹介します。この工場では、3交代24時間操業の厳しい労働環境の中、従業員の健康管理が非常に重要視されています。メフォスは、食事のメニューや味付け、さらに食材選びに至るまで、従業員の健康に配慮した食事の提案を行っています。特に、地域の食材を積極的に取り入れた地産地消にも努めており、食堂での食事が従業員にとって大きな楽しみの一つとなるよう工夫を凝らしています。
健康づくりの取り組みは、単に食事の提供に留まらず、「スマートランチ」といったイベントの実施や、定期的に食堂で行われる「骨強度チェック」などの健康イベントも行っています。これらの活動は、従業員が楽しみながら健康的な食生活を意識できるように設計されており、労働組合や医務室と連携しながら推進されています。結果として、血圧や肥満値の平均値が全体的に改善されるなど、目に見える成果を上げています。
さらに、メフォスは食材の廃棄ロスを減らす取り組みにも励んでおり、従業員からの意見を労働組合を通じて受け止めながら、多様なニーズに応えるメニュー構成やイベント企画に取り組んでいます。東日本大震災の困難な時期も、工場と協力し合いながら復興に努め、厨房担当の従業員と工場の従業員が互いにコミュニケーションを取ることで、食堂を和やかな雰囲気に包み込んでいます。
メフォスの取り組みは、健康的でバランスの取れた食事の提供だけでなく、従業員が健康的に、そして安心して働ける職場環境の実現に貢献しており、その成果が従業員の健康改善に繋がっています。
フジ産業株式会社
フジ産業株式会社は、社員の健康と活力向上を目指し、豊田通商グループの総合力と50年以上の実績を活かした社員食堂と寮・保養所のサービスを提供しています。社員食堂では、栄養バランスを考慮した多彩なメニューで健康管理をサポートし、トレンドに合わせたメニュー開発や専門の調理師による和食・洋食・中華料理の提供を実施。また、近大マグロなどのブランド食材を使用した料理を通じて、社員の皆様の健康維持に寄与します。特に「給食のスペシャリスト」としての地位を築いています。
寮の運営では、2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機にスポーツ栄養マネジメントに特化。公認スポーツ栄養士によるチームと一体となった食事管理や栄養指導、個別コーチングを提供し、選手のコンディショニングとパフォーマンス向上を支援します。また、ウェアラブル端末とアプリを活用したデータに基づく専門的なコーチングを実施しています。
保養所では、旬の食材を使用した本格料理と温かいホスピタリティを提供。地元の食材や豊田通商グループの調達力を活かした料理で、企業の保養所や研修所等での食事提供を行い、適正価格での運営を実現しています。フジ産業株式会社のサービスは、健康経営と社員の健康管理に真摯に取り組む企業様に最適な解決策を提案しています。
まとめ
社員食堂の運用方法は3種類、外部委託、準直営型、自社直営のいずれも一長一短がありますが、その中でも外部委託が増えているというのが現状です。その背景としては、自社運営の困難さや、外部委託による社員の満足度向上が考えられます。
しかし、外部委託する際には注意点も存在します。それぞれの会社のニーズに適したサービス内容を決定することが重要となります。
また、社食サービスとして、置き型社食、デリバリー型お弁当、食事補助・食事券、フードトラックの導入、自動販売機の設置などの選択肢もあります。これらも会社の規模や社員のニーズに応じて検討すべきでしょう。
以上が社員食堂の委託についての概要となります。適切な選択を通じて、社員の満足度向上に繋がる社員食堂の運営を目指してください。