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育成就労制度とは何かわかりやすく解説!技能実習制度との違いやメリットは?

「育成就労」という制度について詳しく知りたいと思っていませんか? 近年、深刻化する人手不足の解決策として注目されているこの制度。しかし、似たような制度である「技能実習制度」との違いや、導入によるメリット・デメリットがよくわからない方も多いのではないでしょうか。この記事では、育成就労制度について、その概要から施行時期、対象職種、そして新設された背景までをわかりやすく解説します。
さらに、技能実習制度との違いを目的、職種の制限、管理体制、移籍の可否、日本語能力要件といった複数の観点から比較することで、両制度の本質的な違いを理解することができます。また、企業にとってのメリット・デメリットも明確に提示することで、導入を検討する際の判断材料を提供します。この記事を読むことで、育成就労制度に関する疑問を解消し、自社にとって最適な人材確保戦略を立てるための知識を身につけることができるでしょう。具体的には、育成型人材と即戦力人材のどちらを採用すべきか、長期的な人材育成計画にどのように組み込むか、といった点について、より深く理解できるようになります。人材不足に悩む企業担当者の方々にとって、必見の内容です。

Contents

育成就労制度とは?いつから施行?

「育成就労」という言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。これから日本で働く外国人、そして外国人を受け入れる企業の双方にとって重要な制度である育成就労制度について、詳しく解説していきます。

育成就労制度の概要

育成就労制度とは、発展途上国等の若者を日本で就労させながら、技能・知識・技術の習得を支援し、母国の経済発展に貢献する人材を育成することを目的とした制度です。2022年4月に成立した改正出入国管理法に基づき、2022年10月から施行されました。技能実習制度の課題を踏まえ、より透明性が高く、人権に配慮した制度として設計されています。

この制度では、受け入れ企業は育成業務に従事する外国人に対して、適切な技能・知識等の習得の機会を提供するとともに、生活指導や日本語教育などの支援を行うことが義務付けられています。外国人材は、日本で働きながら技能を習得し、将来的には母国でその経験を活かして活躍することが期待されています。

育成就労制度の施行時期

育成就労制度は2022年10月から施行されました。改正出入国管理及び難民認定法の成立(2022年4月)から半年後の施行となりました。

育成就労制度の対象となる職種

育成就労制度の対象となる職種は、特定の産業分野に限定されていません。技能実習制度では、受け入れ可能な職種が限定されていましたが、育成就労制度ではより幅広い分野での人材育成が可能となっています。これは、変化の激しい現代社会において、様々な分野で人材育成のニーズに対応するためです。具体的な職種については、法務省が告示で定めています。

育成就労制度が新設された背景

育成就労制度の新設は、技能実習制度における様々な課題を解決するためという背景があります。技能実習制度では、低賃金や長時間労働、人権侵害などの問題が指摘されていました。これらの問題を解消し、より健全な形で外国人材を受け入れるために、育成就労制度が創設されました。具体的には、以下の点を改善することを目指しています。

課題育成就労制度での改善点
低賃金・長時間労働適切な労働条件の確保(最低賃金以上の賃金、労働時間規制の遵守など)
人権侵害人権侵害防止のための監視体制の強化
技能実習の実態がない技能習得のための適切な計画の策定と実施
転職の制限一定の条件下での転職を許可

これらの改善により、外国人材にとってより働きやすく、技能習得に集中できる環境が整備されることが期待されています。また、受け入れ企業にとっても、優秀な人材を確保し、育成することができるというメリットがあります。

育成就労制度と技能実習制度の違い

育成就労制度と技能実習制度は、どちらも外国人材を受け入れる制度ですが、その目的や運用方法には大きな違いがあります。両制度の主な違いを以下にまとめました。

項目育成就労制度技能実習制度
制度の目的開発途上国等の若者を日本で育成し、母国の経済発展に貢献することを目的とする。技能の習得と就労の機会を提供することで、人材育成と国際貢献を両立させることを目指している。開発途上国等への技能移転を通じた国際協力が目的。発展途上国の経済発展を担う人材育成を支援することを目指している。
受け入れられる職種特定の産業分野に限定されない。介護や農業、建設業など、幅広い分野で人材を受け入れることが可能。78職種・83作業に限定されている。対象職種は、製造業や建設業、農業など、技能を必要とする分野が中心。
管理・支援体制技能実習制度よりも管理・支援体制が強化されている。受け入れ機関は、日本語教育や生活指導、キャリアコンサルティングなどを提供する必要がある。違反した場合は罰則規定もある。制度を悪用した人材ブローカー対策も強化されている。受け入れ機関による管理・支援体制が義務付けられているが、育成就労制度と比べると支援体制は限定的。
移籍の可否他の受け入れ機関への移籍が可能。これにより、労働者の権利が守られ、より良い労働環境で働くことができる。原則として移籍は認められていない。ただし、正当な理由がある場合に限り、移籍が認められる場合もある。
日本語能力要件日本語能力試験N4レベル以上の日本語能力が求められる。これは、円滑なコミュニケーションと生活適応を促進するため。日本語能力要件は必須ではない。ただし、技能実習を行う上で必要な日本語能力を習得することが推奨されている。
在留期間最長5年。技能の習得状況や勤務態度に応じて、在留期間の延長も可能。最長5年。技能実習の期間は、職種や技能レベルによって異なる。
家族の帯同一定の条件を満たせば、家族の帯同が認められる。家族の帯同は認められていない。

制度が施行された目的

育成就労制度は、開発途上国等の若者を日本で育成し、その国の経済発展に貢献することを目的としています。技能実習制度は、開発途上国等への技能移転を通じた国際協力が目的です。つまり、育成就労制度は人材育成と国際貢献の両立を、技能実習制度は国際協力を主眼に置いている点が異なります。

受け入れできる職種の制限

育成就労制度は特定の産業分野に限定されず、幅広い分野で人材を受け入れることができます。一方、技能実習制度は78職種・83作業に限定されています。この違いは、育成就労制度がより柔軟な人材活用を可能にすることを示しています。

管理・支援体制が強化された

育成就労制度では、技能実習制度よりも管理・支援体制が強化されています。受け入れ機関は、日本語教育や生活指導、キャリアコンサルティングなどを提供する義務があります。これは、外国人材の育成と適応をより効果的に支援するためです。

移籍ができるようになった

育成就労制度では、他の受け入れ機関への移籍が可能です。技能実習制度では原則として移籍は認められていません。移籍の自由は、労働者の権利保護と労働環境の改善に繋がります。

日本語能力の要件が追加された

育成就労制度では、日本語能力試験N4レベル以上の日本語能力が求められます。技能実習制度では日本語能力要件は必須ではありません。日本語能力要件は、外国人材の円滑なコミュニケーションと生活適応を促進するために重要です。

育成就労制度に関する企業側のメリット

育成就労制度は、企業にとって様々なメリットをもたらします。特に、人材確保の課題を抱える企業にとっては大きなメリットとなるでしょう。以下、具体的なメリットを詳しく解説します。

高い日本語能力を持った人材を確保できる

育成就労制度では、制度を利用するために一定の日本語能力が求められます。具体的には、日本語能力試験N4程度のレベルが求められます。そのため、採用時点で一定の日本語能力を備えた人材を確保することができ、コミュニケーションの円滑化や業務の効率化といったメリットが期待できます。日本語能力の高い人材は、職場への適応もスムーズであり、教育コストの削減にも繋がります。

長期での雇用ができるようになる

技能実習制度では最長5年までの在留期間でしたが、育成就労制度では、更新することで最長10年まで在留期間を延長することが可能です。これにより、企業は長期的な視点で人材育成を行い、育成した人材を長く雇用することが可能となります。 長期雇用は、企業にとって、ノウハウの蓄積や生産性の向上に繋がり、安定的な事業運営を可能にします。また、従業員にとっても、安心して仕事に取り組める環境が提供され、定着率の向上に繋がります。

多様な人材を確保できる

育成就労制度は、特定の技能だけでなく、多様な職種で人材を受け入れることができます。これにより、企業は、これまで採用が難しかった職種でも、海外から優秀な人材を確保することが可能になります。 多様なバックグラウンドを持つ人材の確保は、企業の活性化や新たな視点の獲得に繋がり、イノベーションの創出にも寄与する可能性があります。

特定技能2号への移行パスとなる

育成就労制度で2年以上就労し、技能と日本語能力の要件を満たせば、特定技能2号へ移行することができます。特定技能2号は、技能実習や特定技能1号とは異なり、転職や家族帯同が認められており、より安定した就労が可能となります。育成就労制度は、優秀な人材を長期的に確保するための、特定技能2号への移行パスとしての役割も担っています。

企業イメージの向上

育成就労制度は、外国人材の育成に力を入れている企業として、社会的に評価される可能性があります。CSR(企業の社会的責任)の観点からも、外国人材の育成に積極的に取り組むことは、企業イメージの向上に繋がり、優秀な人材の獲得にもプラスに働くでしょう。

メリット詳細
高い日本語能力を持った人材確保日本語能力試験N4レベル以上が求められるため、コミュニケーションが円滑
長期雇用が可能最長10年の在留期間で、人材育成と長期的な雇用が可能
多様な人材確保様々な職種で人材を受け入れ可能、企業の活性化に貢献
特定技能2号への移行パス2年以上就労で特定技能2号へ移行可能、より安定した就労を実現
企業イメージの向上外国人材育成への取り組みはCSRの観点からも評価され、企業イメージ向上に繋がる

育成就労制度に関する企業側のデメリット

育成就労制度は、企業にとってメリットばかりではありません。導入を検討する際には、下記のようなデメリットも理解しておく必要があります。制度の特性上、人材育成にかかる時間や費用、そして制度運用に関する負担は少なからず発生します。

採用コストの増加

育成就労制度を利用する場合、通常の採用活動に加えて、制度に関する説明会の実施や、海外からの応募者とのコミュニケーション、ビザ取得のサポートなど、追加の手間と費用が発生します。特に、日本語教育機関との連携や、母国語でのサポート体制の構築など、多言語対応が必要となる場合は、更なるコスト増が見込まれます。

早期離職のリスク

育成就労制度で採用した人材は、他の企業への転職が可能です。せっかく育成した人材が、短期間で離職してしまうリスクがあります。特に、待遇面やキャリアアップの機会で魅力的なオファーがあった場合、離職の可能性が高まります。企業文化への適応や人間関係の構築がうまくいかない場合も、早期離職につながる可能性があります。そのため、定着率を高めるための施策を講じる必要があります。例えば、キャリアパスプランの提示や、メンター制度の導入、相談窓口の設置などが有効です。

日本語学習のサポートが必要

育成就労制度を利用する外国人材は、一定の日本語能力が求められますが、業務に必要な専門用語やビジネス日本語の習得には、更なる学習が必要となるケースが多いです。企業は、日本語研修の実施や、日本語学習教材の提供、社内での日本語学習環境の整備など、継続的な日本語学習のサポートを提供する必要があります。これらのサポートには、時間と費用がかかります。また、日本語能力の向上度合いは個人差があるため、個々のレベルに合わせたきめ細やかなサポートが必要です。

制度運用に関する負担

育成就労制度を適切に運用するためには、担当者の配置や研修、管理システムの導入などが必要となります。制度に関する法令やガイドラインを理解し、適切な手続きを行う必要があります。また、外国人材の生活支援や相談対応なども行う必要があり、企業にとって大きな負担となる可能性があります。加えて、制度の変更や更新にも対応していく必要があります。

デメリット具体的な内容対策
採用コストの増加説明会、海外とのコミュニケーション、ビザ取得サポート、多言語対応など採用プロセスの効率化、外部機関の活用
早期離職のリスク他社への転職、待遇面での不満、企業文化への不適応キャリアパスプランの提示、メンター制度、相談窓口の設置
日本語学習のサポートが必要専門用語やビジネス日本語の習得、個々のレベルに合わせたサポート日本語研修、教材提供、学習環境整備
制度運用に関する負担担当者配置、研修、管理システム導入、生活支援、相談対応、法令遵守外部機関への委託、社内体制の整備

これらのデメリットを踏まえ、自社にとって育成就労制度の導入が適切かどうかを慎重に検討する必要があります。導入によるメリットとデメリットを比較し、費用対効果自社の経営戦略との整合性などを考慮した上で判断することが重要です。

まとめ

この記事では、2022年10月から施行された新しい在留資格「特定技能2号」を指す「育成就労」制度について解説しました。制度の概要、施行時期、対象職種、新設された背景に加え、技能実習制度との違いや企業側のメリット・デメリットを詳しく見てきました。
育成就労制度は、深刻化する人手不足を解消し、外国人材の活躍の場を広げるために創設されました。技能実習制度と比較すると、受け入れ可能な職種の拡大、より高度な日本語能力要件、転職の自由など、外国人材にとってより魅力的な制度設計となっています。企業側にとっても、高い日本語能力と一定の技能を有する人材を長期的に雇用できるメリットがあります。一方で、採用コストの増加や日本語学習サポートの必要性など、企業側の負担も増加する可能性があります。
育成就労制度は、まだ始まったばかりの制度です。今後、制度の運用状況を見ながら、更なる改善や調整が行われていくでしょう。外国人材の受け入れを検討している企業は、制度のメリット・デメリットをしっかりと理解し、適切な対応を行うことが重要です。この制度が、外国人材と日本社会双方にとってより良い共存関係を築くための架け橋となることを期待し、今後の動向に注目していく必要があるでしょう。

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