社食の値段はどのようにして決まっているのか?多くの従業員が日々利用する社員食堂は、企業の福利厚生の一環として重要な役割を果たしていますが、その価格設定の背後にはどのような要素が関わっているのでしょう。
この記事では、社食のコスト構造からその価値、さらには多様な社食サービスの選定方法まで、社食運営の隠された側面に焦点を当てて解説します。社食のコストと価値を理解し、社員にとって最適な食事環境を構築するためのきっかけとなれば幸いです。
Contents
社食の値段について
本章は世間一般的に考えらえれている『社員食堂』に焦点を絞って説明をしていきます。
この社員食堂は、企業や組織内に設置された飲食施設で、従業員が休憩時間に利用することを目的としてる施設を指します。通常、社員食堂は、その企業の従業員専用であり、外部の人間の利用は限定されていることが多いです。
一食あたりの平均コスト
一般的に、社食の一食あたりの平均価格は300円〜600円程度となっています。ただ、企業の規模や地域、メニュー内容により大きく変わることがあります。
都市部では、食材費や人件費が高くなる傾向にありますので、平均コストが地方よりも若干高くなります。また、企業規模が大きく、大量調達が可能な場合や、社食運営を専門の業者に委託している場合、一食あたりのコストを抑えることが可能です。これらは全て、社食の価格設定に影響を与える重要な要素となります。
なぜ社食は安く済むの?
社食の価格が一般の飲食店に比べて安く設定されている理由は、主に以下の3つです。
- 「大量調達・大量調理」による経済効果:社食は多くの社員を対象としているため、食材の大量調達が可能です。これにより単価を抑えられるだけでなく、大量調理による人件費の効率化も可能となります。
- 「無駄なく使い切る」による食材コスト削減:メニュー設定や在庫管理を適切に行うことで、食材のロスを最小限に抑えることができます。
- 「利益追求ではない」こと:社食は社員福利厚生の一環として提供されているため、飲食店のような利益追求を目指す必要がないのです。
これらの要素が組み合わさることで、社食は一般の飲食店価格よりも安く、かつバランスの良い食事を提供することができます。
社食の価格設定の背後にある要素
食材費
社食の価格に大きく影響を与える要素の一つが「食材費」です。これは、一食分のメニューを作るために必要な食材の総額を指します。具体的には、主食である米やパン、メインのおかず、副菜、デザートなど、メニュー構成に含まれる全ての食材費を合計したものです。
食材費はメニューの内容や食材の質、仕入れ先などによって大きく変動します。例えば、国産の新鮮な食材を使用する社食は、輸入品や冷凍食品を多用する社食よりも食材費が高くなる傾向があります。
また、一部の企業では、健康経営を重視し、オーガニック食材や特別栽培米などを使用することもあります。これらの食材は一般的なものよりも高価ですが、社員の健康に対する配慮や企業の福利厚生として評価されます。そのため、これらも社食の食材費として考慮に入れるべき要素です。
人件費
社食のコスト内訳の一部を占める「人件費」について詳しく説明します。
人件費とは、社食を運営するために必要な人材の給与や手当、福利厚生費などを指します。簡単なイメージとしては、調理スタッフや運営マネージャー、清掃スタッフ等の人々に支払われる給与を考えていただければわかりやすいでしょう。
社食の運営規模やサービス内容により、必要な人員数やそのスキルレベルは変わります。例えば、自社で調理スタッフを雇う場合と、外部の専門業者に依頼する場合では、人件費の算出方法や金額が大きく異なります。
一般的に、自社で雇用する場合、具体的には調理スタッフの給与・賞与、社会保険料、退職金、研修費用や制服など、人件費だけでなく多種多様な経費が発生します。
一方、外部の専門業者に依頼する場合は、そのサービス内容や契約条件によりますが、基本的な料金プランに含まれる運営費用と食材費、人件費などが一定の金額となるのが一般的です。
このように、費用は自社雇用と外部専門業者とで大きく異なり、それぞれの選択にはその運営規模、予算、求めるサービスレベルなどにより、最適な選択が異なってきます。
運営コスト
社食の運営コストは、その価格設定に大きく関わります。運営コストとは、主に以下の要素で構成されます。
- 施設維持費:社食の運営スペースにかかる水道光熱費や清掃費、設備の修繕費など。
- 食器・ランチョンマット等の消耗品コスト:使い捨てではない食器やランチョンマット等は、洗浄・交換にもコストが発生します。
- 管理費:社食の運営スタッフの教育やスケジュール管理、衛生管理などのコスト。
表1. 社食運営コストの要素
要素 | 内訳 |
施設維持費 | 水道光熱費、清掃費、設備修繕費等 |
消耗品コスト | 食器やランチョンマット等の洗浄・交換費 |
管理費 | スタッフ教育、スケジュール・衛生管理費 |
これらのコストは、社食の規模や運営形態により異なり、価格に大きく影響を及ぼします。
その他の要素(ロイヤルティ等)
社食の価格には、食材費や人件費だけでなく、「ロイヤルティ」なども考慮する必要があります。
「ロイヤルティ」は特定のブランドの社食サービスを利用すると、そのブランドから提供されるメニューやシステムを使用するための料金が発生します。このロイヤルティも、全体の運営コストに含まれ、結果的に一食あたりの価格に影響を及ぼします。
以上のような要素も含め、社食の価格は様々なコストから導かれています。そのため、一見高く感じられても、その背後には様々な要素が組み込まれていることを理解することが重要です。
社食を利用するメリットとその評価
社員食堂の導入、運用にはそれなりの価格が必要なことが分かりました。それでも社員食堂の導入する企業はいます。社員食堂を利用するメリットはなんでしょうか?
社員満足度の向上
社食がもたらす利点は数多く、その一つに社員満足度の向上があります。社食利用によるメリットを挙げると、以下の3つが主なものです。
- ランチタイムの有効活用: 社食の利用により、食事準備や外食にかかる時間が削減され、ランチタイムをより有効に活用することが可能となります。これは働き方改革の一環とも言えるでしょう。
- お財布に優しい: 社食の価格は一般的に市場価格よりも安く設定されています。これは、社員の生活費負担を軽減し、経済的な安心感を提供します。
- 忠誠心の育成: 社食は会社からの福利厚生の一環とみなすことができ、それは社員への還元とも言えます。こうした取り組みは、社員が会社に対する忠誠心を育むきっかけとなります。
これらの要素は、社員満足度を向上させる重要な要素であり、社食の価値を高めています。
社員の健康増進
現代の企業経営では、健康経営が重要視されています。これは社員の健康を維持・向上させることで、組織全体の生産性や士気を高めるためです。その一環として、社食の役割が見直されています。
社員食堂がない場合、社員の多くがランチにコンビニ弁当や外食を選択します。しかしこれらは、一方的な栄養素が偏りがちで、健康的とは言えません。
一方、社食では専門の栄養士が栄養バランスを考慮したメニューを提供します。これにより、社員はバランスの良い食事を摂る機会を得られ、健康状態を向上させることが可能です。また、社食の活用は、社員の食生活を見直すきっかけを提供し、健康意識の向上にも寄与します。
以上から、社食は社員の健康増進に大いに寄与すると言えます。社食の価格を考える際にも、これらの健康面でのメリットを考慮することが重要です。
コミュニケーション活性化
社食がコミュニケーション活性化につながると言われますが、それには具体的な理由があります。
1.「共通の話題」の提供 社食メニューやその日の食事の感想など、共通の話題が生まれやすい場となります。これにより、部署や役職を超えた交流が促されます。
2.「カジュアルな場」の提供 社食は仕事場から一歩離れたカジュアルな場として機能します。リラックスした環境での会話は、新たなアイデアや意見交換を生むきっかけになります。
以上2点を考えると、社食は単なる食事場所以上の価値を持つことがわかります。社食の値段という視点からも、その投資価値を理解することが重要です。
企業ブランディングとしての価値
企業ブランディングにおいて、社食の価値は非常に高いと言えます。社食は社員へのアピールだけでなく、外部へのイメージ作りにも効果的です。安定した品質とリーズナブルな価格の社食があることで、企業が社員の健康や福利厚生を重視しているという印象を持つことができます。
また、良質な社食があることは、採用活動においても大きな強みとなります。ポテンシャルのある求職者に対して、社会貢献度の高いエンタープライズである証として機能します。新鮮でバラエティ豊かなメニューを提供する社食は、企業の創造性や革新性を示し、その企業文化に対する理解と信頼を深めることができます。
さらに、社食の価格設定によっても企業の価値観が表現されます。例えば、価格を抑えつつも栄養バランスの良いメニューを提供することで、企業が社員の健康を第一に考えているという姿勢を示すことができます。また、一部のメニューを高価格に設定し、その売上を社会貢献活動に使うなどすると、企業のCSR(企業の社会的責任)への取り組みが具体的に伝わります。
こうした社食の存在自体が、企業のブランディングに対して大きな影響を与えるのです。社食の価格設定は、企業の方針や価値観を伝え、社員だけでなく、外部の人々へもポジティブな印象を与える重要な手段となります。したがって、社食の価格設定は、単なるコスト削減の問題だけでなく、企業ブランディングの一環として考えるべきです。
社食サービスの検討について
ただ、社員食堂を導入するにはハードルが高いのも確かです。そのため、安価で手軽に利用できる『社食サービス』を選択する企業も増えています。
この章では社食サービスについて触れていきたいと思います。
社食サービスの種類と特徴
社食サービスは企業のニーズに合わせて多様あります。主な5つをご紹介します。
- オフィス向けフードデリバリーサービス:一般的なフードデリバリーサービスと同様、企業に対して外部の飲食店から食事を宅配します。メニューのバリエーション豊富で、社員それぞれの好みや健康状態に合わせた選択が可能です。
- オフィス向け弁当宅配サービス:弁当を一括して企業に届けるサービスです。精算や注文の手間が省けるため、大規模事務所や工場等に適しています。
- 置き型社食:企業内に設置された食堂で、社員が自由に飲食できる形式の社食です。定期的に食材が補充され、社員は自由に調理できます。
- オフィスコンビニ:社内に小規模なコンビニを設置し、食品や日用品を購入できるサービスです。24時間利用可能で、急な必要性にも対応できます。
- 専用チケット発券型:社員が飲食店で使える専用のチケットを発行する形式です。社員の食事範囲を広げることができ、モチベーション向上にもつながります。
これらの中から、社員のニーズや企業の条件を考慮して選択することが重要です。
社食サービスを選定する際のポイント
社食サービスを選定する際は、以下の3つのポイントを考慮することが重要です。
1.【予算】 まずは、社食運営にかける予算を明確にします。社食の設立・運営費用は初期費用とランニングコストに大別され、これらを含めた総予算を把握しましょう。
2.【社員のニーズ】 次に、社員のニーズを把握します。健康志向の強い社員が多いなら、栄養バランスを考えたメニューを提供するサービス、時間がない社員にはスピーディーに提供できるサービスを選ぶ等、社員のライフスタイルに合ったサービスを選ぶことが求められます。
3.【価格と品質のバランス】 最後に、一食あたりの価格と提供される食事の品質のバランスを見極めます。価格だけでなく、栄養面や味にもこだわりたいところです。
これらを踏まえ、最適な社食サービスを選びましょう。
実際の社食サービス事例紹介
社食DELL
「社食DELI」は、さまざまなお店のお弁当を企業内や指定の場所に配達するデリバリー型の社員食堂サービスです。毎日8〜10ブランド、30種類以上の和洋中エスニック・ヘルシー系のメニューを安定して提供し、定期的にブランドの入れ替えを行って飽きさせない仕組みを持っています。
また、備品のレンタル、販売場所の準備・片付けなどは社食DELIが全て行い、導入企業には運営コストが一切かかりません。初期費用は無料で、必要な費用は月額のシステム利用料、スタッフ派遣料、配送料のみのため導入がしやすいと評判です。
オフィスおかん
オフィスおかんは、株式会社OKANが提供する社食サービスで、オフィスに専用の冷蔵庫を設置し、定期的にお惣菜が補充されます。社員はリーズナブルな値段で購入でき、1品100円で健康的でおいしいお惣菜を楽しめます。
また、お惣菜は管理栄養士が監修し、素材や調味料にこだわり、国産原料や安全基準を満たす外国産原料のみを使用しています。導入ハードルが低く、導入後の管理が必要なく、手軽に始められる社食サービスです。
びずめし
「びずめし」は、従業員向けの福利厚生として利用できる社食サービスです。このサービスは、企業が従業員に毎月の昼食代を付与するだけで、店舗との金銭取引は全て「びずめし」が担当します。全国各地の様々な店舗を「社員食堂」として利用できるため、従業員の満足度を向上させることが可能です。
また、常設型社員食堂に比べ、初期投資や運営コストが大幅に削減でき、最速で翌月からの導入やコスト変更、少人数からの導入も可能です。利用可能店舗は全国に20万店舗以上あり、コンビニ、飲食チェーン、コーヒーショップなど多様な選択肢が提供されます。
まとめ
本記事では、社食の一食あたりのコストとその内訳について詳しく解説しました。社食の価格は、食材費や人件費、運営コストなど様々な要素によって設定されます。また、社食は価格だけでなく、社員の満足度向上や健康増進、コミュニケーションの活性化など、企業にとって様々なメリットがあります。
さらに、社食サービスの種類や選定する際のポイントも紹介しました。これらを参考に、自社に最適な社食サービスを選ぶことが重要です。
最後に、社食は企業の福利厚生だけでなく、効率的な働き方を支える重要な要素であることを忘れないようにしましょう。